神通峡かいわいの昔話集 第85話 「古い松と天狗」 企画・編集 佐田 保 | 神通峡ふるさと創生物語ブログ1:「神通峡かいわいの昔話」・「集落ガイド」・「神通峡のわらべ歌」・「神通峡民話物語」等

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古い松と天狗   富山市二松

 



 むかーし、二本松のお寺の前に、でっかい、でっかい、古い松の木があったと。木の根っこが、あっちにもこっちにも、広がっておったと。


 その木の根っこがもり上がっているので、まるで小高い山の頂上に、松の木があるように見えたと。


 その松の木の上に、いつからか、天狗が住みついていたといね。天狗は、人に悪さするでもなし、いつものんびりと、昼寝をしておったと。かくれみのを持っているので、天狗に気づくものは、だれ一人いなかったといね。


 nある暑い朝のことだったと。お寺の住職が、お参りから帰る途中、
「暑くて、暑くて、たまらんわい。ことしの暑さは、かくべつじゃ」
とひとりごとを言いながら、でっかい松の木の下を通ったと。


 すると、涼しい風が、吹いてきて、思わず大きな声で、
「おーい、さわやかな風が吹いて来るのー。気もちよいわいー」

と言いながら、松の木の上を見上げたと。そこには、でっかい、でっかい、いちょうの葉っぱと、もみじの葉っぱがまるで、プロペラのように、回りさくっとったといね。


 お寺の住職は、
「あれは、きっと、天狗のしわざにちがいない」

と思ったと。

それからは、どんなに暑い日でも、松の木の下だけは、涼しかったと。


 ちょうど、そのころ、大きな松の木の前に、寺子屋があって、おおぜいの寺子たちが、手習い(読み、書き、ソロバン)を習っていたと。おもに、お寺の住職が教えておられたそうな。


 古い大きな松の木は、多くの寺子たちの遊び場であったと。寺子たちは、手をつないで、松の太さをはかったり、松の皮をめくっては、
「これは、馬だ」「牛だ」「ねこだ」「えんころだ」
と言って遊んだり、また、松ぼっくりや緑の松葉をたくさん拾ったりして、遊んだと。


 やがて、笑い声がたえなかった寺子たちに、古い大きな松の木との別れがやって来たと。ある年のこと、松根油(松の根にある油)をとるため、松の木は切られてしもたがやと。


参考資料「二松のあゆみ」
「船峅のむかしがたり」