キネマの神様を見た。
傑作とは言わないけれど、沢田研二がいいわ。
連想といえば。「君に読む物語」。
前半の若き日の思い出話と後半の妻の認知症との戦いの日々。
キネマの神様では、前半ははっきり言って、なんかテレビの連続ドラマみたいでつまらない。
よしこちゃんだったか。
みんながある誠実で字が綺麗な、映画青年を結婚相手を勧めたけれど、よしこちゃんは、怒る。
「私が決めることよ」と。
それで。よしこちゃんは、競馬に酒が好きな少し不良のイケメンを選ぶ。私の人生なんだから、私が決めることよ。
ああ、それから。数十年。
「君に読む物語」では、美しく笑顔が最高の妻の介護をまめまめしくする老人が出てくるけど。ライアンゴスリングの良さがまるでなし。
逆に。
「キネマの神様」では、沢田研二が出てきてから、いきなり映画が盛り上がる。
酒に溺れ、競馬で金を使い、借金だらけ。映画でも、パッとしない人生の負け犬として登場。
多分。西洋の理想の男性像と、日本の当時の男像は違うんだろうなあ。
よくも悪くも、日本では、どうしようもない男性に尽くして尽くして、離婚しようかと思いつつも、最後まで添い遂げる、そんな妻の像がこの映画の舞台となる時代では、良し、とされたもんなあ。
かたや。西洋では。そういう人もいたでしょうが、マイナー。
やはり、妻に尽くす、妻に対する愛情というものが、正統的に演出というのが素敵なんだろうな。キリスト教。
日本。GHQ洗脳でサムライ精神も溶けてなくなり。
男は、とにかく、器の大きさを日本刀ではなくて、退廃的な行動にと変えたこの70年か。
この沢田研二が扮する男。映画監督になる夢に敗れ、競馬に負けて、酒に溺れたけれど。 最後の最後に愛する孫のヘルプを得て、シナリオを公募。100万の懸賞を見事に獲得。!!
親戚、家族からびっくりされる。
離婚寸前のよしこちゃんも泣く。
授賞式の日に、病院に倒れてベッドの中から、自分の代わりにスピーチをするはずの妻に渡した紙切れの言葉を、電話にて、妻の口から聞く。
「・・・・・ありがとう・・・・」の家族への言葉。魂の言葉やね。やっと吐いた言葉や。
その後に。コロナで、潰れそうな映画館の友達←確か、あの誠実なとしこちゃんに惚れてた男子の経営する映画館。
その100万の少し使った残りを手渡すとしこちゃん。
そこで、往年の自分たちが作り上げた名画をぼんやりと見ている沢田研二。映画を見ながら死にたいというのが彼の夢でもあった。
肉体はすでにボロボロ。何回も入院を繰り返す。
現実とかつて愛した女たちの幻想が入り乱れる。
キネマの銀幕の中から、おいでおいで、と女性に手招きされる、沢田研二。
銀幕の中では、かつての友達や惚れた女たちが演技をしているのだ。
「モスラ」の映画を見たのが、私が小学生の頃だったか。
ピーナッツのあの歌が強烈に残っている。
ピーナッツの確か伊藤エミと結婚。
田中裕子と再婚。
子供達の選ぶ昭和の歌唱力のある男性歌手のベスト10にも選ばれて、あの帽子を投げるシーンに拍手喝采。
まるで、この「キネマの神様」の主人公 そのもののようにも思える。
としこちゃんが、ふと隣を見ると。
沢田研二が倒れている。まるで眠っているように。