すべての人類は愛人を愛する。 エマーソン 「随筆集」 |   心のサプリ (絵のある生活) 

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すべての人類は愛人を愛する。

エマーソン 「随筆集」

序の舞        映画と小説

 個人的な趣味で、宮尾登美子は大好き。自分の四国の実家の記憶を元にほぼ実話からイメージして小説を書いています。映画も名取裕子が素晴らしい。好きな日本映画のベスト5に入ります。

風間杜夫と佐藤慶。才能のあるすけべな男を大胆に演技しています。もうこんな演技ができる男性の俳優は皆無。絶滅種。

上村松園の生涯をモデルとした宮尾登美子の同名小説の映画化。明治の世、しかも古い慣習を尊ぶ古都を舞台に、未婚の母として強く生き抜いた女流画家の波乱の生涯を描く。

 実は、この映画も以前の私のいた会社が後ろ盾になり、この序の舞の着物も、再現復刻しました。

 上村松園。

 一等をはじめて取った時、その報奨金は、

 当時のお金で、60円。

 ひとりが一年間食べていけという台詞あり。

 ここでの、姉妹と母親の掛け合いのところが非常に楽しい会話。

 二人娘を苦労して育てた母親と娘たちの決して綺麗事ではない戦争のような会話。

 好きなシーンである。

 おなごの髪の毛はおんなの命。

 だから、もっともっと髪の毛を細く描けないだろうかと、思案する。

 ここもまた、好きなシーン。

 雷雨のなかでも、細い線を探して、樹々の針のような茎を探し続ける。⇦絵の好きな人ならばわかってもらえるだろうけれど、細ーい筆良い毛の面相筆は一本欲しいのですね。^^

そして、「千枚書き」のシーン。

 大和魂を感じるシーン。

 魂を感じさせない絵は絵じゃないというのは今でも通用する言葉だと思う。

 日本にはこのようなサムライ魂が、まさに、文武両道に、あるのだった!!!!

 興味深かったのは、あたりまえかもしれないけれど、千枚書きのシーンを見ていると、

 自然のたとえば、竹などを、脳裏に浮かぶイメージとして、今で言えば、イコンのようにして、描いている。

 けっして、そのまま、自然を忠実に写すというような西洋の描き方ではない。

 遠近法でもない。

 墨にして、竹をあらわすとでもいうような、抽象的な、観念的な、竹。

 それでいて、竹は竹。竹に見えるという。

 遠近法、光と陰、立体。それらが西洋画のメインの哲学。

 日本は線画です。そして二次元で宇宙を表現する。

 しかも、書と一体として。

  いつか、上野で、冷泉家の書道展を見たが、たとえば、かつては、書と絵は

 ある意味、いつも同時に飾られていた。素晴らしかった。!!!!

   百人一首にもあるような、歌=書。

  そして、琳派などの絵=image。

   書と絵。興味深いシーン。

 ◎おんなとおんなの心の葛藤がみごと。憎いくらいに上手い。

 しまさんと、つやさんの、姉妹の嫉妬劇。

 はやくお嫁入りさせてくださいと、それでないと自分がどんどん嫌な女になっていく・・・

  叫ぶしまさん。⇦名取裕子の姉。

 嫉妬心。好きな男がつやさんに惚れているということ。・・・・・しかも、絵の才能を持っている。自分は手に火傷まであるという、平凡な女。・・・・・・・それは妹への嫉妬は恐るべきものだと思う。

 ◎妾というと、現代では良きイメージはない。

 ただ、当時の時代を考える。

 また、先生と弟子ということを考えると、プラスの要素も当時は、たたある。

 絵という修羅の世界のなかで、自分の絵を世の中に売り出し、それで食べていく。

 母や姉にも孝行をしたい。

 しかも、相手が尊敬する師匠でもある。

 現代人の目から見たら、軽薄なる妾の存在であっても、そこにこだわりすぎると、

 当時の世相や、絵の純粋を見落とすことになると思った。

 何でもかんでも、テレビではヒステリックに不倫は全て一括り。

 若い女子は、「新品の男子がいい」という統計あり。

 これを聞いて時代は変わったと思った。

1 野村監督の亡き妻が、「男なんて浮気するんだから、そんなもん、ワンコが電柱におしっこするみたいなもんなのよ、」とか。

2 吉田茂首相が、国会で、「あなたは愛人が一人いるそうですが」と質問された時に、「馬鹿野郎、二人だ」と答えたこと。

3 フランスのミッテラン大統領が、愛人問題で質問された時に、「『エ・アロール それがどうしたの』」と答えたこと。誰も知らないんですね。フランスは恋の国。この言葉をテーマに、2003年に、老人ホームの恋を描いた小説がテレビ化されました。今年も、確かとある作家が「老人の恋」をテーマに10万部、ヒットしています。

 ◎それにしても、この佐藤慶。仲代達矢が兄貴として褒めているだけあって、嫌らしくも昔の男そのものをよく演じている。

  その後。

  人生の矛盾やら、男と女の不条理のつながりなど、

  ヒントをくれるシーンが続く。

 ◎佐藤慶がオレを超えたなと、いうところ。不思議な感じがした。コネと師匠関係でがちがちの、古い日本画画壇。

  なんであれ、これを変えていこうとする精神に拍手。

  日本画を上村松園が書く時の、姿。日本画独特の、床に和紙を広げてのシーン。

 興味深い。

  彼女の母親が、里子に出した女の子の死から一変して、隣近所の連中がなんといおうと、=外、内が平和で楽しければ良しというあたりは、女の強さがあり、感銘。

  新しき男に惹かれながらも、自分を苦しめる男との関係を続けてしまう上村松園。⇦いやあ、しびれますね。道徳にいいとか悪いとか、ではなくて。

  女心と、男の支配欲。

  ここでも、また、考えさせられる。

  いくらクローンが産まれるような21世紀にあっても、男と女の関係は、古来、さほど、変わらない。

  つまり、嫉妬に、魂に、肉体に、好き嫌い。

  コネに、金に、名誉欲に、食欲・性欲・に、人に好かれようとする欲望あり。

  そのあたりの、矛盾と、どろどろとした、魂のなかの、オリをなんとか昇華させんとする上村松園。

  子供を産む苦しみにひとり耐え忍びながらも、田舎の小さな小屋の壁に、まさに情念ともいうべき絵を描く上村松園。

   一人、誰からの支えもなく子供を納屋で一人出産するつや。

   声も出ないシーン。そして、それを絵に昇華する上村松園。

   美人画を超えた瞬間だった。