資料より
主人公・三上(役所広司)が出所するシーンから物語が始まるのだが、「やれやれ、お前が出所か」というムードでありながらも刑務官は三上の出所を心から喜ぶ。冒頭数分のシーンだが、その温かな目線に痺れる。この目線を集める事実だけで、この三上という男が“いい人”であることがわかるのだ。しかし、殺人を犯した人間が“世界”に着地した瞬間から、あらゆることが起こる。職は見つからず、犯罪歴からあらぬ疑いもかけられる。バイアスをかけられ、“人”に追い込まれていくが、点と点を繋ぐように“人”に救われる──このさざなみのような繰り返しが、今作の醍醐味、心に刺さるリズムだ。
●良い人に恵まれているのに自殺に追い込まれる そこがイマイチ 納得はいかないけれど 女子の監督なので 繊細なのだろう。
個人的にこの役所のキャラは、すごく魅惑的。
エコライザー的。
それじゃあダメなんだ。女子からみると、これが物語なんだろう。
あまりにも繊細すぎる。人ってこんなに繊細で美しくて弱いものか。
しかし。
映画も耽美派の映画としてみると美しい映画だとは思う。
高倉健の映画のようなカタルシスは全くない。
資料
破綻した兄弟間に湧く一瞬の情を捉えた『ゆれる』(2006)、
人を騙し続ける夫婦の恩情を受け取れる『夢売るふたり』(2012)、
氷のように冷たいようで内包する熱い愛を眺められる『永い言い訳』(2016)
。西川美和監督は一貫して、人間の“つじつまの合わなさ”を巧みに描いてきた。そんな彼女の最新作『すばらしき世界』は、タイトル負けしない素晴らしい景色に包まれたものだった。