いよいよ迎える08年K-1無差別級の集大成となる最終決戦。
イベントを主催するFEGの谷川貞治イベントプロデューサーに、見どころを聞いた。
■「去年と比べて5人が入れ替わった」
――決勝トーナメントにはピーター・アーツ、バダ・ハリ、エロール・ジマーマン、エヴェルトン・テイシェイラ、グーカン・サキ、ルスラン・カラエフ、レミー・ボンヤスキー、ジェロム・レ・バンナの8選手が残りました。まず韓国で行なわれた9月の開幕戦を振り返っていかがですか?
ここ1、2年、ヘビー級は試合内容がいいと思うんですが、今年も3月からずっといい大会が続いて、開幕戦もすごくいい内容でした。それは1つに、バダ・ハリを中心とした若手が育ってきて、ただ強いだけじゃなくメーンイベンターとしての試合ができるようになってきた、という感じがします。
――開幕戦の結果に“新旧交代”の印象を抱いたのですが、この点に関してはどう思われますか?
これまで試合内容はどうしてもベテランの人に安心感があったのですが、今年はほんとに若い人たちがメーンイベンターを凌駕(りょうが)するような試合をやってきて、その結果開幕戦を終えた時点で去年と比べて5人が入れ替わったと。まだ名前が知られていないという点で若干不安もあるんですが、いい意味で世代が変われたなという気がしています。
――転換期が訪れたと
そうですね。やっぱりバダ・ハリが中心で、バダ・ハリ以外にもルスラン・カラエフとサキというすごいスピードのある選手がいて、一方で極真の大器、世界チャンピオンのテイシェイラと、あとはものすごく強くなるか、ものすごく失敗するか分からないエロール・ジマーマンっていうのがいて、この5人が本当に今年は楽しみです。
■「(アーツ戦は)ハリが勝たなきゃダメな試合」
――では、さっそくトーナメントの展望をお聞きしていきたいと思います。まず準々決勝第1試合のピーター・アーツvs.バダ・ハリ
思い入れから言うとピーター・アーツなんですけど、これはバダ・ハリが勝たなきゃダメな試合ですね。ボクはある意味、ハリにとってアーツに勝つことは、優勝するより大切だと思っています。ここを超えてやっと、優勝争いだけじゃなく意味のある大会になるような気がします。
――K-1を大河ドラマ的に見た時、長年その象徴であったアーツの役目を、ハリが打ち破ることで今後担っていけるのかと
そうですね。決勝で見たいようなカードだし、ピーターも今年が最後の勝負ぐらいの感じで頑張ってくるでしょう。本当に象徴的な2人です。
――準々決勝第2試合はジマーマンvs.テイシェイラ
ボクは潜在能力で言えば、テイシェイラってすごいと思うんですよ。リザーブファイトで武蔵を使いたかったんですけど、なんでも武蔵はテイシェイラの顔面パンチをよけた時に、肩にパンチが当たって肩の腱(けん)が伸びちゃって出られないっていう。グローブをしてるのに、正拳突きで肩の腱が伸びるなんて初めて聞きました。だからテイシェイラはそれぐらい潜在能力があるんですけど、現時点ではボクはジマーマンの方が勢いがあると思います。
――開幕戦の前にお話をお聞きした時点では、谷川さんはジマーマンを“化けるか消えるか”という風におっしゃっていましたが
相変わらずそう思います(苦笑)。でもここでテイシェイラに勝ったら、もしかしたら優勝っていうか決勝まで行く可能性があると思います。未知数なところがありますし、将来的にはテイシェイラだと思うんですけど、グローブ慣れしてるしジマーマンが有利じゃないかと。テイシェイラは初めて日本人以外の実力者と戦うんですけど、あまり守りに徹しないような戦い方を期待したいです。あまり待ちゃうと、やっぱりファイターとしての魅力がなくなってしまいますし。この一戦は2人の可能性だったりポテンシャルが計られる試合だと思います。
■「優勝する可能性があるのはレミーだと思う」
――3試合目は新鋭同士の顔合わせとなるサキvs.ルスラン
うーん、ルスランはバダ・ハリと一緒でほんとスピードがあるし、バダ・ハリよりもスピードがあるのがルスランだと思うんですけど、これもバダ・ハリ同様で打たれ弱いんですよね(苦笑)。すごくハラハラするファイターなんで、そういうトータルな強さではサキの方がいいかもしれないです。
――まだ、その存在を十分認知されてるとは言い難いサキですが……
ものすごくいい選手ですよ。バダ・ハリとやっても互角の試合ができる選手だと思いますし、日本人が目指してほしいタイプです。体は小さいけど、テクニックと特に蹴りがスゴい。だからこの試合もどっちが勝つか分からない。混戦になってルスランが先に倒すか、でも逆に倒されちゃうかもしれないし……。安定しているのはサキのような感じがします。
――第4試合は唯一常連ファイター同士の組み合わせとなったボンヤスキーvs.バンナ
個人的な思いから言えばジェロムに優勝してほしいんですが、今回の8人の中で1番優勝する可能性があるのは、実を言うとボクはレミーだと思うんです。経験と安定した強さ、そしてこの組み合わせを見ると、本命はレミーじゃないかと。レミーが一番苦手なのはピーターでしょうけど、ピーターの山はキツいし、上がっても結構傷ついていると思うんです。だから順当に言えば、優勝はレミーで準優勝はピーター・アーツになるんじゃないですかね。でもボクが見たいのは、バダ・ハリvs.ジェロムの決勝です。それが1番見たい。ただ、意外とサキとかジマーマン、テイシェイラみたいな伏兵が優勝する可能性もあると思います。マーク・ハントじゃないけど、そういうノーマーク組が優勝するのもいいかなという気がします。
■「大型ファイターはもういいかな」
――ヘビー級もパワーの時代からスピードの時代へと?
それでK-1のヘビー級を面白くしていってほしいですよね。大会ポスターのキャッチフレーズに「世界一の試合をした者が世界一になるべきだ」ってありますけど、やっぱり魔裟斗の影響が大きいと思うんです。魔裟斗がMAXですごくいい試合をしたじゃないですか。ああいう試合がヘビー級のファイターにも伝染してほしい。ああいう試合をしてほしいし、あれがK-1ファイターとしてあるべき姿です。それをヘビー級でもやってほしい。だから今回はバダ・ハリが魔裟斗になれるかどうかです。
――魔裟斗選手がバダ・ハリを見て刺激を受けていた時がありましたが、今度は逆にハリが魔裟斗から刺激を受け奮起する番だと
もし倒れても、立ち上がって優勝するんだという気迫が出てくるかどうか。知名度としてはピーター、ジェロム、バダ、レミー以外の4人はまだまだなんですけど、試合は面白い試合をしてくれると思うし、この大会で大化けしてくれればと思います。ピーターやジェロムには十何年の思い入れがあるので頑張ってほしいという本音はありますが、新世代はそれを許していてはダメだと思います。