昼間の月 | 秋と廃墟と午後の雨

この前、彼女さんと夕暮れ前に散歩していたら、薄い紫陽花色の空の向こうに、色褪せた白い月が見えた。

昼間に見れる月が僕は好きだ。

「お前、夜にしか現れるんじゃないんかい」ってなりながらも「いや、でもそりゃそうだよな。君は衛星なんだから昼間に見えてたとしてもおかしくないもんね。僕らがそれに気づかないだけで」ってなった。

僕らが知らないだけで、世界や銀河や自然はそれぞれのルールに則って進行している。その横をひっそりと僕らも進んでいる。

僕らが認知していない部分でも、世界は正常に回り続ける完璧な設計をしており、そんじょそこらのバグや誤作動なんかも飲み込んでしまう。

そんな仕組みの一部でもある月を昼間に見れた時に、なんだか世界の裏側を知ってしまったみたいなワクワク感がそこにはあると思えてならない。

どうやって動いているのか分からない、すごく巨大な時計の内部を知ることが出来たかのような気持ち。

もしくは工場見学に近いのかもしれない。(工場見学でワクワクしたことはこれまで一度もないけれど)

そんな月を見ながら彼女さんと防波堤に一緒に座って、近くの公園で遊んでる子供たちの声を聞きながらのんびりとした時間を過ごしていた。