『週末だし。ゆっくり寝よう!』って思ったら、夜中の会社の電話に起こされた

3ヶ月前くらい、私のところにある人物から電話が来た。
「私を通訳で使ってください。私、経験があるから仕事出来る。」
彼はブラジル2世で片言だが日本語でそう言った。

「あのね。通訳をやりたいってブラジルの方はたくさんいるの。でも、難しい仕事だから皆すぐ辞めちゃうの」
「私は大丈夫だよ」
「そう、みんな『私は大丈夫』って最初は言うの。でも、辞めちゃうの」
「大丈夫。私は出来る」
彼は引かない。
通訳の実態は『辞めちゃう』のではなく『解雇』になるのだ。

もともと、ウチの会社では日本人がブラジル、ペルー、フィリピン、ボリビア…の人たちを管理していた。通訳として日系人をサポートに使っていたが
日本人がポルトガル語が分からないのをいいコトに通訳にいろんな言葉を混ぜ込むケースが多い。

たとえば…
日本人管理者「あなたのビザの期限が近いから更新に行ってきてください」
日系人通訳 「アンタのビザが切れるから更新に行って来ないとクビだぞ」となる。

当人「ワタシ シゴト ヤスンダラ オカネ ナクナル…シゴト ヤスミタクナイ」となれば、

日本人管理者「有休を使って、ビザの更新に行ってくればいいよ」
日系人通訳 「アンタの有休はもう残ってないから代行業者に頼めばいい」となる。
そうやって、代行業者に人を紹介し日系人通訳は紹介料をせしめる。
日本人管理者は、仕事も休まず代行業者に依頼したと聞き『真面目な人間だな』と勘違いし、その実態に気付けないでいた。

信頼できる日系人通訳が必要なのは間違いなかった。
しかし、日系人通訳はプライドが高くお金にはとびきりの執着を見せる。
慎重にならなければ…

「じゃあ、『他の人と私は違うんだ』ってとこを見せて頂戴」
「分かりました。どうすればいい?」
「まず、うちの会社に来て!話はそれから。」
そうして、私は彼に課題を与えた。

彼の仕事ぶりには関心させられた。
今まで口だけで、出来ない日系人はたくさん居たが彼は違った。
何より低姿勢で従順、こちらの意図を掴むのも早かった。
「私はお金より仕事ね。仕事があればお金も大丈夫ね。」彼はいつもそう言っていた。

―1ヶ月後
「おい!アイツ使えるぞ」上司がそう言ってきた。
「私もそう思います。しかし、もう少し様子を見ましょう」

―2ヶ月後、彼は与えられた課題の数字をはるかに超えた。
「おい!アイツをウチで引き取ろう」上司が言った。
「そうですね。彼なら大丈夫ですね」

そして、彼はわが社の通訳として働き始めた。

しかし不可解なことが続いた。
明らかに遅刻して「今、どこにいる?」と尋ねると
「ボスに呼ばれて1つ仕事をしてきたところで…これからそっちに行くよ」

ボスは私の目の前にいる。

「私、車が欲しいよ。あなた車屋さんと友達って聞いた。紹介して」
「キャッシュ?ローン?」
「私30万円ある。キャッシュで買える車でいい」
私は、知り合いの車屋へ「通訳が車がほしいと言ってるから相談に乗ってあげて」と頼んだ。
後日、車屋からがきた。
「30万の車。キャッシュは5万しかなく後はローンにしてくれって」
「話が違うな…」
「ローンには保証人が必要だと言ったら『micaがなってくれるって言ってた』って言ってるけど本当か?」

何かがおかしい。
私は彼を呼んだ。
「何を企んでるの?」
「私、何も企んでないね」
「私が保証人になるって言ったんだって?」
「私そんなこと言ってないよ。あの車屋ウソツキね!頭に来るね!」
「いい加減にしなさい!!」
「…」
この頃から目つきが変わってきていた。

その後、ことある毎に
「私そんなこと言ってないよ。あの人ウソツキね!頭に来るね!」
「いい加減にしなさい!!」
「…」
の連発になった。



昨日の夜中の電話…
ボスから、彼の懲戒解雇の報告だった。

当社の名前を使って車の購入費未払い
引っ越し資金を当社が払うと約束して未払い
当社の名前を使って教会の設立資金集め
他社へ行き、当社の名前を使った儲け話の勧誘

「私そんなこと言ってないよ。あの人ウソツキね!頭に来るね!」がすべて明るみに出たのである。