正直、料理は私の方が上手だと思っていたから、
あの人がキッチンに立ったとしても、アシスタントが
必要よね、と思っていた。
が、驚いたことに、あの人は手際よく、白菜を茹で、ニラを細かく切って行く。
ぽかんとしながら、
手際、いいね。
と言うと、あの人は嬉しそうに
高校のころ、厨房でバイトしてたんだ。
少し得意気な顔しながら、そんなカミングアウトしつつも
相変わらず手は止めない。
ミンチを調味し、ニンニクやショウガ、下処理した野菜を入れて具にラップをかけ
さて、これでしばらく寝かせてから、包もう。
えへん、と一仕事終えた本日のシェフは、満足気に手を洗い、
リビングのあの人の指定席に座ってしまった。
まぁ、シェフだから仕方ない。
使った道具の洗い物は私の役目のようだ。
洗い物を終え、私もリビングに行くと、シェフは待ってましたとばかりに
すり寄ってきて、
はい、これして。
と、耳かきを手渡してきた。
具を寝かせている間、あの人は私の膝枕で耳掃除してもらいながら
まどろんでいた。
本当に、私たちの会話は尽きない。
耳掃除が終わってからも、TVを見ながら話をしたり
足裏マッサージをしながら、平日の午後をのらりと過ごしていた。
夕方になり、そろそろギョーザを包もうと、あの人が立ち上がった。
家でギョーザを作ったことのない私は、当然、包むことができない。
結構、大量のギョーザを一人でするのって、大変だろうなぁ、と
思っていると、さすが昔取った杵柄。
手が覚えているのだろう、あの人は同量の具をさっとすくい、
器用に皮にヒダをつけ、あっという間に包んでゆく。
凝り性なあの人だし、十八番レシピということもあり本当に仕事が丁寧だ。
あの人が包んでいる間に、私はサイドメニューとして、エビチリと
ブロッコリーの生姜炒めなどを作り、それをツマミにしながらシェフに乾杯。
テーブルのホットプレートでギョーザを焼きながら、
二人だけのギョーザパーティーが始まった。