もしもし。
あの人が寝室で電話にでる。
台所で朝食の準備をしていた私は、反射的に水道や火を止め、
あの人の携帯に部屋の音が入らないように、息を殺す。
あ、うん・・・うん・・・今、電車だよ。
聞き耳をたてるつもりはなかったが、静かにしていたから、
寝室から電話を切ったあとの、あの人の溜息が聞こえた。
おふくろからだよ。今どこかって。
私が何を聞くでもなく、あの人がそう言いながらリビングへ来た。
一晩帰らなかった息子(って言ってもいい年ですが^^;)を心配して
かけてきたようだ。
あの人を気遣うのは、奥さんではなく、いつもご両親らしい。
準備しかけの朝食をどうしよう、と思っていたら、あの人は
いま○○駅って言っといたから、あと30分くらいは
大丈夫だよ。だから朝食よろしく。
そう勝手なことを言って、顔を洗いに洗面所へ行ってしまった。