週明け開催されたハンガリー国立銀行 定例政策決定会合、先週発表された3月 賃金
上昇率が市場の予測であった年率 + 6.0 % を大きく上回る + 8.4 % となったことから、
金融市場では金利据え置き見通しが大勢を占めていた。
討議結果、市場の予測どおり政策金利である現行 8.0 % の 2週間の預金金利は据え置きと
なったが、13名の政策決定理事のうち、据え置きが7名、金利引き下げ主張理事が 6名という
僅差での政策金利現状維持が決まったという。
また利下げ主張理事のうち、シモール・ハンガリー中銀総裁をはじめ 5人の理事が 25 bp の
利下げを提唱。 残る 1名が 50 bp の引き下げを唱えたが、上記記述どおり 3月の賃金
上昇が予想外に大きく、今後のインフレ動向にまだ不透明感が残るため、今回の理事会では
現行 8.0 % の政策金利を据え
置いたと述べている。
会議終了後シモール総裁は、「大幅な賃金上昇はハンガリー経済の鈍化を招き、ハンガリー
中銀の中期的インフレ・ターゲットである + 3.0 % 達成を遅らせることにも繋がる。 また原油
価格の上昇は、中銀が当初見込んでいた計画よりもやや高い」とし、「インフレ・ターゲットの達成は
今後 18ヶ月ほどの日数を要し、2009年第 1四半期になろう」と述べ、賃金と原油価格の
上昇がハンガリーのインフレ低下をやや遅らせる可能性を指摘している。
しかしながらハンガリー金融市場では、金融緩和サイクルにまもなく入るとの見通しが強く、
3ヶ月物短期金利は昨日の時点で 7.79 % で推移。 すでに 25 bp の利下げを織り込んで
いる。 さらに 4月は薬価下落とハンガリー国内 2都市部で家庭用電気料金の引き下げが
実施されていることから、6月12日に発表予定の5月 CPI は低下すると見られており、
6月 25日に開催される政策決定会合では利下げが実施されるとの観測が強い。
唯一の懸念材料は、今週水曜日 (5/23) から、ハンガリーのガソリン価格が 1リットルあたり
5フォリント引き上げられ平均で 278 から283フォリント (約 187円) へ値上げされる
予定である。
同国のガソリン価格は、先週も 5.5 % 引き上げられたばかりであるため、今後世界の
原油価格の上昇が顕著になるのであれば、同国インフレ低下の足かせとなりそうである。
同日ハンガリー中央銀行は、2009年までの同国経済見通しを発表 (改定値) している。
それによると、
. 2007 2008 2009
C. P.
C. P. I. (Core) 5.70 3.40 3.10
G. D. P. 2.50 2.80 3.40
個人消費支出 - 0.80 0.60 1.80
国内需要 0.00 1.70 3.20
国内資本投資 2.30 4.60 5.90
輸 出 15.30 11.80 9.50
輸 入 12.20 10.70 9.40
経常収支赤字 (対 GDP 比) 4.70 4.40 4.20
平均賃金上昇率 7.20 6.20 5.00
上記数値において、2008年の CPI は当初見通しの + 3.4 % から + 3.6 % へと上方修正
していることもあり、ハンガリー中銀自体が予想外にタカ派的マインドを持っているとし、市場では
意外感が台頭。 別の言葉で言えば、「今後の金融政策の舵取りは利下げに対して慎重な
態度をとってくるのでは」とし、好感を持って受け入れられたようだ。
今回の金利据え置きはかなりバランスの取れた措置だとする市場の評価が高く、またハンガリー
中銀に対する信頼性も以前にも増して向上したようだ。 結果フォリントは対ユーロおよびドルに
対しても買いが入り、ハンガリー債券市場も逆に政策変更なしを好感。 イールド・カーブ全体に
底堅い動きをとり、前日比 2.0 ~ 1.0 bp 金利低下で引けている。
唯一株式市場が約 0.7 % の下落を示したのみで、ハンガリー金融市場は引き続き安定感が
増してきているようだ。
米 ド ル/ 対 円 : 121.45円 + 0.35 02年債: 7.02 % - 2.0 bp
フォリント/対 円 : 0.658円 + 0.004 10年債: 6.57 % - 1.0 bp
フォリント/対米ドル: HUF 184.60 + 0.950 原油価格: $ 66.27 + 1.33
フォリント/対ユーロ: HUF 248.65 + 1.700 金価格: $663.80 + 1.80