今回の話は、ひょっとするとこれが人生で一番怖かった、そして危険だったかも知れない話…。結局、何が何だかわからないのだが…。また冬期講習の用意などで、ネタはあるが書く時間がないと理由から、分けてアップさせてもらいます。

 

 

僕は海や山が好きだ。

 

昔からよく山なら近場の山、海なら毎年夏に福井県まで足をのばしている。

 

昔から冒険じみた事が好きだったので、山に行っても普通のハイキングコースではなく、荒れた獣道や道なき道をよく突き進んでいたものだ。

 

つまりよく山奥で遭難じみた事態に陥ったり、妙なものに出くわしたりするわけだ。

 

 

高校生の時の話、まだあのお地蔵さんに出会ってもなかった頃、僕は山で一人、道に迷っていた。(笑)

 

と言ってもハイキングコースが近くにあり、水道管のような鉄菅が通っていたりと、遭難とは程遠く、全く楽観的に歩いていた。

 

基本的に山に行くときは、いつでも帰れる事と、好きな道を好きなだけ進めるという理由で一人が多かった。

 

となり側が小さな谷になり、水の音が聞こえ始め、僕が近場にこんなところがあるのか…と感動さえ覚えた頃、曲がり道の茂みに妙なものがあった。

 

だ。

 

子供の靴が片方だけ、茂みの草の枝にぶらぶらとぶら下がっている。

 

サーっとさる木々、遠くから聞こえる鳥の鳴き声…。

 

チョロチョロと聞こえる水の音に枝に引っ掛かった子供の靴…。

 

履いてた本人はどうなったの?

 

大自然の壮大な雰囲気が一変して不安感に変わる…。

 

まさか…谷に…。

 

だが良く見るとそれは、幼稚園児がはくような赤い靴…

 

女の子の靴だ…。

 

ハイキングコースに近いと言っても、そこから外れ、決して楽ではない道のり…。

 

女性が来るとは考えにくい…。

 

ましてや小さな女の子など…。

 

回りにそれ以外の何も棄てられていないのに、不法投棄の一種だ、と無理矢理そう納得して、鼻歌などを口ずさみながら先に進んだ。

 

するとまた道に何か散らばっているのが見え始める…。

 

やっぱり不法投棄か…。こんな山奥までなかなか気合いが入ってるな…。

 

などと思いながら、何とはなしにそれを横目に見て通り過ぎようと思っていた。

 

しかし足が止まった…。

 

止まって確認せざるをえなかった…。

 

だ。

 

服が散らばっている…。

 

男性用の服だ。

 

それが一式、散らばっているというよりは綺麗に並べられている…まるでそこに誰かが倒れているように…。

 

ジーンズがあり、赤いダウンベストがある…。

 

奇妙なのは、ジーンズの裾からは靴下が覗いており、ダウンベストの下には長袖のTシャツ、頭に位置する場所にはひしゃげた眼鏡があった。

 

 

なんだこれは…?

 

不法投棄というよりはイタズラっぽいが、こんな山奥の、道もほとんどないような場所にイタズラでこんな事をするか…?

 

じゃあなんだ?

 

誰かが倒れたまま骨も残さず溶けてなくなったとでもいうのか?

 

不法投棄に決まってる…。それ以外ない…。

 

 

僕はそう思い込む事に決めた。

 

とにかく急いで下りの道を下ろう…。

 

そうすれば必ずハイキングコースとぶつかるはずだから…。

 

僕はそう決めてその場をあとにしようとした時、

 

『キーッヒッヒッヒ…。』

 

という大きな声(?)が響き渡った。

 

擬音語で表現すると人間ぽく聞こえるがあれは人じゃない…、獣だと思う。

 

それほど人間の出せるような音量、音域ではなかった…。

 

僕は急ぎ山を下った…。

 

下っている最中も余計な思考が僕を焦らせる…。

 

不法投棄にしてはゴミの量が少なすぎる…山奥でありすぎる…。

 

あの声はなんだ?着いてきていないか?など…。

 

しかし僕は山を下りきる事に成功した。

 

以外にもその出口は普通の住宅街と繋がっていて、その山への入り口(出口?)には看板があり、植林地、立入禁止と書いてあった。

 

僕は無事家に帰れたわけだが、最後に気になった事がある。

 

立入禁止の看板が見える少し前、薄暗い山中を川に沿って下っている時に、川の向こう側に明らかに人工的なものが見えた。

 

小さな祠だ。

 

何が奉られているのかわからないが、古くて廃れていて、かなり昔からもう誰も参拝していないのだろうと容易に予想がついた。

 

確かめる気にはならなかったが、どんないわれがあるのか…。

 

ひょっとしたらあの時の声に関係があるかも…と考えたのは中2病末期の症状か…。
 


どうしても気になった僕は、後日、その祠のようなものを確認しに行った。

 

だが今回は一人ではなく、今回の事を全て話した上で乗り気だった友人Sを連れて二人で行った。

 

二人で立入禁止の看板を越え、浅い川の向こう側へ渡り、その祠を見に行った。

 

祠は思っていたよりも小さかった。

 

さすがにその小さな扉を開ける勇気はなかった。

 

その場で話し合った結果、まだ先があるんじゃないかという予想の中、僕らは前に進む事にした。

 

すると先を歩いていたSが…っていうか下田(笑)が…

 

『おい!なんかあんぞ!』

 

と声をあげた。見てみるとプレハブのような材料を寄せ集めて作られた簡易的な住居のような建物が見えた…。

 

続く…