ネタばれなし・・・・たぶん平気
消失グラデーション 長沢樹 角川書店
2011年 横溝正史ミステリ大賞受賞作
久しぶりに ”おもしろい” ミステリに出会いました
周到な企みに満ちた長編ミステリ作品
歴代受賞作の中でも三本の指に入る逸品! 綾辻行人
先入観なしにページをめくってほしい
誤りなく組み上げられた建築である。 北村薫
ラストで隠されていた真実が露わになると驚愕した
間違いなくわたしが読んだ中で最高傑作である。 馳星周
こんな推薦文にそそのかされて・・・、でもこれは当たりかな。
馳星周氏は大げさですけどね(笑)
一気読みできます。
学園モノなので私は少し抵抗感がありましたが、それはそれ、あまり気になりません。登場人物に好感が持てるエンターテイメント性の高い作品で、ドロドロした暗い殺人ものではなく、読後は爽快感さえあります。
感想を一言で書くと・・・
『やられた~! えー? そうくるかよー!!』です。
これは喜びの言葉。
ミステリ読者は騙されるとドMばりに喜ぶんです
さらにもう一度やられて『え?お前もか!?』です。
しかしズルい。 マジでズルい。 このプチサディストめ。
未読の人は何のことかわからないでしょうが、正直言ってネタばれなしに感想を書くのが難しい。北村薫氏の「先入観なしに読め」というのはこういうことかと、読んだ方は理解できるでしょう。
つまり・・・
作者は最初から巧妙に読者を騙そうと”罠”を仕掛けているんです。
あれ?こういうこと書くとマズイかな?これこそこの作品のミソだから、これこそネタばれなのか???
まぁいいか(笑)。
これだけでわかっちゃう人がいたら大したもんです。うん。
消失事件のトリックについては、「なるほどそういうことね・・・」くらい。
私にはその半分くらいしか推理できませんでしたが、大したトリックは使われていませんので、超絶な技巧トリックを期待する方にはお勧めできないかも。
事件の動機については「こりゃわからん!」です。意外でしたね。
グラデーションってこういうこと?
そういうことがあること自体を知りませんでしたから、ちょっと突飛かなという気持ちがありますが、それが網川の親友柴田の行動をより一層真実味のあるものにしています。
いや~、それにしても笑ってしまったのは私自身の推理。
絶対アヤシイと思ったのは樋口真由(///∇//)
だって、背徳の死角のカメラに今まで何が映っていたのか一番知っているのは樋口。正門や北門の防犯カメラの中身も手に入れることのできる立場で細工も可能なのは樋口。
動機もありそう。主人公椎名への嫉妬か?「こいつアヤシイぜ~!こりゃ~ヒカル君とつるんだ共犯か黒幕だろ~」なんて勘ぐりながら読んでいました(爆)
しかし表紙の帯を見てください。読後にスキャンして初めて気付きました。
「樋口真由”消失”シリーズ」・・・なにぃ
折り返しには「かわいすぎる名探偵・樋口真由デビュー戦!」
ガ~ン
作者は樋口を探偵にしてシリーズ書こうとしていたのか
表紙にカバーつけて読むんじゃなかった
でもこれ楽しいですよ。悲しい部分もあるけれど。
全てを知った上でもう一度読みたくなります。
最後に、これから「読もうかな」と思っている方に予言。
読み終えた後、あなたはきっとため息交じりに「主な登場人物」を凝視することでしょう