ーーーいつからこの空間にいたのだろう?
記憶の彼方、果てしない暗闇の中に落ちていく感覚。
足元は何もなく、ただひたすらに実際に落ちている。
やがて、かすかな光が見えた。
それが近づき、次第に形を現す。
それは、どこか懐かしい、温かみのある光だった。
光の中に現れたのは、小さな受付。
そして、そこに立っているのは、柔和な笑顔の受付嬢だった。
「いらっしゃいませ。ご苦労様です。こちらへどうぞ」
受付嬢は、彼を招き入れるように手を差し出した。
彼は、まるで夢を見ているかのように、受付嬢の指示に従い、受付へと歩み寄った。
「お飲み物は何になさいますか?」
受付嬢の問いかけに、彼は我に返った。
まさか、これが現実なのだろうか?
彼は、自分の置かれている状況が理解できずにいた。
「え、あの、ここはどこですか?」
彼は、恐る恐る尋ねてみた。
「ここは、休息の場です。ご安心ください。ご希望の飲み物をお持ちします」
受付嬢は、穏やかな声で答えた。
彼は、ようやく落ち着きを取り戻し、ブラックコーヒーを注文した。
しばらくして、喫茶店でよく見るコーヒーカップが運ばれてきた。
彼は、深呼吸をして、一口飲む。
温かいコーヒーが、彼の体をじんわりと温めていく。
「ところで、なぜここにいるのですか?」
彼は、再び受付嬢に尋ねた。
「それは、あなた自身が決めることです。ただ、ここにいる間は、安心して下さっていいかと思います」
受付嬢は、そう言うと、彼に一枚の券を渡した。
「これは?」
彼が尋ねると、受付嬢は微笑んだ。
「それは、あなたの帰りの引換券です。いつでも使えます。ただし、この券は一度しか使えません。よく考えてから、使うようにしてください」
彼は、券を手に、じっと見つめた。それは、ただの紙切れにしか見えなかったが、彼にとっては、希望の光のように輝いていた。
彼は、落ちていく空間で、たくさんのことを考えた。
今までの人生を振り返り、これからどう生きていくべきか。そして、この券は使う時がくるのか。
長い時間をかけて、彼は決断を下した。
彼は、受付嬢に感謝の言葉を述べ、券を握りしめ、再び暗闇へと飛び込んでいった。
彼は、無限に続く暗闇の中を、どこまでも落ちていく。
しかし、もう彼は一人ではなかった。
彼の心の中には、温かい光が灯っていた。
それは、受付嬢の笑顔と、彼が受け取った希望の光だった。
そして、彼は気づいていた。
いつか、この暗闇にも変化の時がやってくると。