雪が降りしきる冬の朝、小さな女の子、さおりんは、家の窓から外を見つめていた。真っ白になった庭には、昨日まで見慣れた風景がどこかに消え、まるで別の世界が広がっているようだった。

 

「さおりん、早く起きなさい!」

 

母の呼ぶ声が、静かな部屋に響く。

さおりんは布団から飛び出し、窓の外に目をやる。

すると、そこには雪合戦を楽しむ男の子の姿があった。

 

真っ赤なマフラーを巻いたその子は、吹雪と名乗った。

 

「ねぇ、吹雪くん。大きくなったら結婚しようね」

 

幼いさおりんの言葉に、吹雪は少し照れながら、「うん、しよう!」と答えた。

 

月日は流れ、二人は高校生になった。

吹雪はバスケットボール部に所属し、学校の人気者。

 

さおりんは吹雪を陰ながら応援していた。しかし、二人は少しずつ変わっていった。吹雪は部活に明け暮れ、さおりんは進路について悩んでいた。

 

ある日、吹雪はさおりんに告白した。

 

「さおりん、ずっと好きだよ。ずっと一緒にいたい。」

 

さおりんの心は喜びでいっぱいになった。

でも、同時に、自分の気持ちに正直になれない焦燥感も感じていた。

 

卒業を控え、二人は将来について話し合う機会が増えた。吹雪は大学に進学し、バスケットボールを続けることを決めていた。

一方、さおりんは地元で就職したいと考えていた。

 

「さおりん、一緒に大学に行こうよ。」

 

吹雪の言葉に、さおりんは複雑な気持ちになった。彼の気持ちに応えたい。でも、自分の夢を諦めることもできない。

 

「ごめん、吹雪。私にはできない。」

 

さおりんの言葉に、吹雪の顔が曇った。

二人は長い沈黙の後、それぞれの道を歩むことを決意した。

 

数年後、さおりんは地元の小さな会社で働いていた。

ある冬の日、さおりんはいつものように職場に向かっていた。道すがら、見慣れた公園に足を運ぶと、そこには一本の桜の木があった。

 

「こんな寒い時期に、桜が咲いている…」

 

さおりんは不思議に思い、近づいてみると、それは見事な紅色の桜だった。まるで、冬の寒さをものともせず、力強く咲いているようだった。

 

そのとき、さおりんは吹雪のことを思い出した。吹雪もきっと、どこかの場所で、自分の道を切り開いているのだろう。

 

さおりんは桜の木の下で深呼吸をした。そして、静かに呟いた。

 

「ありがとう、吹雪。そしてさようなら。」

 

それから数年後、さおりんは東京で開かれた同窓会に参加した。久しぶりに会う友人たちに囲まれ、さおりんは昔を懐かしんでいた。

 

会場を出て、夜の街を歩いていると、誰かに肩を叩かれた。振り向くと、そこには笑顔の吹雪が立っていた。

 

「さおりん、久しぶり。」

「吹雪くん…」

 

二人はしばらく言葉を交わし、昔のように色々な話をした。そして、吹雪は言った。

 

「さおりん、ずっと探していたんだ。」

 

さおりんの心は、冬の桜のように温かく、そして切なく揺れた。