蝉の声が盛んに響き渡る夏の午後。

 
直樹はいつものように広場で一人サッカーボールを蹴っていた。

 

汗ばんだ肌に夏の太陽が照りつけ、少年の心は高揚していた。

しかし、次の瞬間、彼の体はまるで木偶の坊のように硬直し、動かなくなった。

ボールは宙に浮いたまま、直樹は両足を地面につけたまま、一点を見つめたまま、時が止まったかのように静止していた。

 

その様子を遠くから見ていたのは、幼馴染の結衣だった。

いつも元気な直樹の姿が見えなくなり、不審に思った結衣は駆け寄った。

 

「直樹、どうしたの?!」

 

結衣が声をかけようが、直樹は反応しない。彼の顔色は蒼白で、呼吸も浅かった。

結衣はパニックになりながらも、冷静さを保とうと努めた。

 

直樹がなぜこんな状態になったのか、結衣には見当もつかなかった。

しかし、幼い頃から一緒に過ごしてきた直樹なら、何か知っているかもしれない。

 

結衣は幼い頃の二人のことを思い出した。

二人はよく一緒に森へ遊びに行き、不思議な植物や動物と出会った。

その中で、結衣は不思議な力を持っていることに気づいた。それは、植物と話したり、小さな動物を操ったりする力だった。

 

もしかして、直樹の身に何かが起こっているのは、その力と関係があるのかもしれない。結衣はそう考え、深呼吸をして、直樹の額に手を当てた。

 

結衣の心の中で、幼い頃の記憶が鮮やかに蘇ってきた。

 

森の中で、直樹が毒キノコを食べてしまい、意識を失ってしまったことがあった。

そのとき、結衣は直樹を助けようと、必死に祈った。

すると、不思議な光が直樹を包み、彼は意識を取り戻したのだ。

 

ーーーーあの時のように、直樹を助けたい。

 

そう願った瞬間、結衣の体から温かい光が溢れ出した。

その光は直樹を包み込み、彼の硬直した体がゆっくりと動き始めた。

 

「直樹!大丈夫?」

 

結衣の声に、直樹の目がゆっくりと開いた。彼は結衣を見つめ、かすれた声で尋ねた。

 

「結衣…?」

「うん、私がいるよ。もう大丈夫」

 

結衣は直樹の頭を優しく撫でた。直樹は安堵の表情を浮かべ、結衣に抱きついた。

 

二人は再び、いつものようにサッカーボールを蹴り始めた。

夏の太陽の下、二人は笑顔で走り回っていた。

 

直樹の身に何が起こったのかは分からなかったが、結衣は直樹を救えたことを心の底から喜んでいた。

そして、二人の絆は、この出来事をきっかけに、さらに深まったのだった。

 
後日、直樹は病院で検査を受けたが、異常は見つからなかった。
医師は、一時的な神経系の異常だったのではないかと推測した。

 

直樹は、あの日のことを結衣に打ち明けた。

 

「あの日、僕は何か不思議な力を感じたんだ。まるで、誰かに助けられたような…」

 

結衣は微笑んで、直樹の頭を撫でた。

 

「それはきっと、僕たちの絆の力だよ」

 

二人はこれからも、ずっと一緒にいたいと心から思った。