舞台。真っ暗。
「昨日出たんだってよ」
舞台左端の一人にライトを照らす。
「何が?」
その隣のやつにも照らす。
二人は学校の木製パイプ椅子に座っている。
「聞いた聞いた、3年B組の奴らが言ってたよ」
3人目のライトも照らす。
学生服の3人は高校生。詰襟の服で色は黒色。
「放課後に友人2人で勉強してたら、いつの間にか6時を超えていたらしいんだけど」
最初の生徒が話し出す。
「すでに真っ暗になっていたから、みんなでトイレ行って帰る最中に」
うんうん、と二人は頷く。
「使われていない3年6組の、真っ暗な教室で、一人生徒が座っていたらしいんだよ」
「あの一番端の教室か?」
2番目の生徒がびっくりして聞く。
「ああ、カーテンを閉めているから、ほとんど見えなかったらしいんだけど、人影ははっきり見えたらしい。そして人がいると気づいた瞬間にそいつは立ち上がったらしいんだ」
「それでそれで?」
「そしたら「今何時?」と聞いてきたから、びっくりして二人とも先生に帰る事を言わずに逃げたらしい」
真ん中の生徒は少し椅子からズレて言った。
「それじゃあ、誰かわかんないんじゃないか」
安堵したように真ん中の生徒が言った。
「そうじゃないんだ」
もう一人の生徒が口を出した。
「逃げて、下駄箱のところで慌てて靴を履き替えようとした時に、後ろに人が立っていたんだ。そして「時間くらい教えてくれてもいいじゃないか」といったそいつの顔を見たら、目が真ん中に1つしかなかったらしいんだよ」
「そうそう、そしてそいつらは恐ろしくて、そのまま上履きで逃げて帰ったらしい」
「マジかよ。とんでもねえな。それが現実かよ」
「もちろん次の日、先生に言いに行ったら、逆にどやされて、連絡せずに帰った事をこっぴどく怒られらたらしいよ」
「聞いてくれなかったのか?」
「信じてもらえなかったらしい。まあ考えれば当たり前だよな」
「そいつらは?」
「今はダッシュで帰って、イオンで勉強する事にしたらしい」
「なんだよ、普通のオチか」
「でも、昔から3年6組って、そんな話があるよな」
「ああ、なんでも昔あの教室の中で、自殺があった、という話だぜ。だから1組2組じゃなくて、A組B組って言い方を変えたらしいいからな」
3人のライトが消えて、今度は右にライトが照らされる。
ひとつ目玉の学生が立っていた。
「僕はこの学校から出られないんだ。ここで死んだら、学校から出れなくなった。唯一暗くなると姿を出せるようになるんだけれど、その時にはもう生徒は誰もいない。今は冬で早く暗くなるから、ギリギリ人がいる時間に出る事ができるけど、明るい場所には姿を現せないから、いつも怖がられて逃げられてしまう。大人には姿は見えないらしいから、怖がられてただのお化け扱いだよ。寂しいな」
「そりゃ、お前当たり前だよ、お化けなんだから」
カーテンを照らす。揺れて、話しているような感じで。
「お前が言うなよ。俺は少なくても、人の形をしているんだから。お前はカーテンだからどうしようもないかもしれないけどさ」
「俺はそもそも人間じゃないから、いいんだよ。人と話なんかしてなくても、他と喋れるからな」
「それが羨ましいよ。俺はお前しかわからないから、お前としか話せない。他の人とb話したいよ」