「おっさん、あほやなぁ」

 

竹野守はいつもこんな感じだ。

ほとんど同じ年なのに、おっさんと呼ぶ。

 

もう20年以上の付き合いだが、

昔は「遠藤さん」と言っていたが、

いつの間にかおっさん、

と呼ぶようになっていた。

 

関係性はアルバイト時代に

一緒にいてたまに遊んでいた仲だ。

 

その時代にあいつに好意を

寄せている女の子がいたので

仲を取り持って以来、

その彼女と別れてからも

ずっと関係性は続いていた。

 

「おっさん、はよ結婚しいや」

 

竹野は元々モテているので

すぐに彼女ができてその後結婚した。

 

俺は昔に彼女が1人いただけで

その後は彼女がいなかった。

 

「相手がいたらな」

彼女いない歴が長いのもあるが

どうも彼女が欲しい、

という気持ちが湧かなかいのだ。

 

まあ、作ろうとしても

なかなか作れないとは思うが。

 

「なんでこんな家を買ってん?」

「昔から店舗付き住宅に憧れがあってん」

 

そう、俺は独身ながら家を購入した。

しかし1階は事務用の店舗。

そして2階は住宅になっているのだが

15坪しかないため1LDKだ。

 

「なんか商売する、ってわけでもないんやろ?」

「まあ、定年したらなんかやろうと思ってるけどな」

 

そう、俺はサラリーマンなので

この店舗で今は商売をする気はない。

 

ただの趣味で購入したのだ。

 

「せめて一階が住宅やったらよかったんやけどな」

 

ーーーそんな発想はなかったな。

確かにもし一階が住居だったら

楽しいかもしれない。

 

老後は商売しない場合は

そういったレイアウトに

変更するのも面白そうだ。

 

「おっさん、トイレどこやねん」

「そこ」

 

竹野がトイレを覗いた時に

そのトイレの奥から

ふと黒いものが見えた気がした。

 

「ん?、なんか虫でもおる?」

「え?いや、おらんで。ーーーこれユニットバスかいな。こんなん使いにくいやろ?」

 

「え、あぁ、確かに使いにくいわ。でも掃除は一箇所で一気にできるからそれは楽やで」

 

俺は掃除が嫌いでなかなか掃除しない。

 

しかしユニットバスを掃除しないと

カビが生えると狭いので

なかなか掃除がしにくい構造なのが

考えるだけで億劫なので

この家に来てから

風呂後に掃除するようにした。

 

最初は結構な重労働だったが

慣れるとそうでもなく

むしろ

「汚いから掃除しなきゃ」

というストレスから解放された。

 

毎日風呂ついでに掃除をして

トイレも一緒に掃除するから

掃除時間をわざわざ確保する必要も

掃除しなきゃ、というプレッシャーからも

解放される事になったのだ。

 

むしろ家事の1つがなくなった、

くらいに気持ちが楽になった。