「今日も寒いな」
ぼんやり明るくなり始める朝。午前六時四十分。轟健太はいつものようにマンションを出た。今は二月で冬の真っ只中なので、空気が痛い。大阪でこのレベルなのだから、東北ってどんなレベルなんだろう?ふとそんな想いにも駆られたが、それ以上気にする事はなく、いつものコンビニに目を向けた。少しお腹が空いているので一瞬パンでも購入しようかと思ったが、朝は食べないと決めているので、やっぱりやめた。車が2台並んだら人がほとんど通れないような道を歩いたところで、もう少し広がった道に出た。阪急電車とJRの駅が非常に近く、その間の通りだ。ここだけ賑やかな人通りが多い道となっている。轟の仕事場に行くにはJRで大阪まで行かないといけない。電車に乗って大阪に行き、環状線に乗り換える。そこから4つ進んだ駅に降りると繁華街とは逆の住宅街に進んでいった。途中で結構長い坂道に入り、ここから1kmほど坂道を登る。斜面に面した住宅街もなくなった先に学校があった。彼はここの用務員をしていた。特殊な学校でハイテク機器を揃えているこの学校は用務員に求めるレベルも高く、高齢者斡旋のアルバイトでは対応しきれずに正社員を雇っている。とは行っても用務員は彼一人でなんでもやる。プログラミングから電球の交換、草むしりなど仕事内容は多岐に渡る。仕事は教師が気づいた事ややってほしい事がメールで届くので、それを行うのが主な内容だ。自分を管理している人はいなく、フリーのような存在に思われているが、実情は仕事が追い付いていなくて、毎日バタバタのまま日々が過ぎている状態だ。
「いい加減なんとかしないとな」
轟は事務員に増員の話をしたいが、管理者がいない為に、仕事の全容を把握している人がいない。だから人の増員をお願いするためにはまず仕事内容を書き出す必要があるが、それをする時間がないのだ。そうやってすでに休日出勤も含めてほぼ365日働き詰めだ。私立学校だが、コンプライアンスにはうるさいので、タイムカードは休日に当てられている日は押さない事にしている。