三岡奈々から荷物が届いたのは、世界中で争われる有名なヒップホップダンス大会が始まる3日前だった。野々村直哉が合宿に参加したのは1ヶ月前。世界大会には厳重な荷物チェックが入る。

 

賄賂を送ってくる者や少しの体調の変化もダンス表現に影響するため、妨害工作をする人もいるからだ。賞金2000万ともなれば、そういった輩も出てくる。しかし野々村が所属する「ビッグジャパンチーム」の荷物検査には特にそういった細かい検査もなく、マネージャーが中身を開けて確認するだけだ。

 

「また届いたよ。5回目だっけ?」

そういって、轟甚太は苦笑いしながら荷物を手渡ししてきた。

 

「おい、荷物は写真を撮って検品リストに書くんじゃなかったのか?」

何事もルールを守ろうとする俺はそういうと轟はアメリカジョークさながらに呆れた顔をして手を半分上げた。「あんたの荷物はこの検品用の部屋の防犯カメラに録画されているからもうそれでいいよ」そういって部屋から出て行った。

 

確かに世界大会予選で有力候補の3つが体調不良で大会を棄権した結果、成り上がったチームに妨害工作をする輩はいない。しかしそれは奈々のアホみたいな手紙が原因だと思っている。

 

「いっつも合宿の状況を教えてちょうだい!って言ってるのに全然教えてくれないし、一体何やってんの?合宿っていいつつ、ただのんびりバカンスしているんじゃないでしょうね!あと昨日直哉のお母さんから直哉にも食べさせてっていって、直哉の大好物のグラタン貰ったから冷凍してるので、ちゃんと食べてね。私も食べたけど美味しかったよ。世界大会の荷物検査って厳しいって聞いたから、今度はちゃんと毒味して冷凍しているからね」

 

そう書いてあって届いたグラタンの4 つを見るとなんと端っこの方が全て食べられて冷凍してある。

 

「どこまでアホなんだ……」荷物検査があるんだから手紙の内容が読まれる位わかるだろうに。それに食べかけを冷凍して何になるんだ。しかもこれを食べるのには料理長に頼んで解凍して温めてもらわないと食べることもできない。冷凍物なので、そのまま放置するわけにもいかず、離れにある料理長のところに持って行った。

 

「今度は何が届いたんだ?」

調理室に入るなり、金岡泰造はジロリと睨むとめんどくさそうに呟いた。

「グラタンです、、、」そう言って直哉はグラタンの入った段ボールをそのまま差し出した。

「食品有害物質検査がどれだけめんどくさいか言っただろう?、、、ってかなんで食べかけ冷凍されてんだよ!?」

「食べ物には検査があるから、送ってこないでね、と返事したら毒味して冷凍されて来ました」

「……こいつアホなのか?」

「そうだと思います」