「はぁ…」
ため息をつきながら、男は真新しいパソコンの画面を睨みつけた。
彼の名は田中太郎。30代半ばのサラリーマンだ。
先日、長年愛用していたノートパソコンがついに寿命を迎え、最新型のモデルに買い替えたばかりだった。
「これで仕事も捗るぞ!」
そう意気込んでいたのも束の間、新しいパソコンは太郎の期待を裏切るものだった。
まず、キーボードの配列が微妙に違う。
エンターキーが小さくなり、Deleteキーの位置も変わっている。
長年染み付いた指の動きは狂い、ミスタイプの連続だ。
「なんだよこれ…使いにくいなぁ…」
イライラしながらも、太郎はなんとか作業を進めようとした。
しかし、今度はマウスの反応が悪い。カーソルが思うように動かず、クリックミスを連発する。
「あーもう!イライラする!」
ストレスは頂点に達し、太郎は思わずマウスを机に叩きつけた。
「…落ち着け、太郎。まだ新しいパソコンに慣れていないだけだ」
深呼吸をして、太郎は心を落ち着かせようとした。しかし、問題はそれだけではなかった。
新しいパソコンには、これまで使っていたソフトが入っていない。当然だ、OSだって違うのだから。
「えーっと、オフィスソフトはどこだ…?あれ?インターネットブラウザも違うのか…」
慣れない操作に戸惑い、太郎は途方に暮れた。
「…前のパソコンの方が良かったんじゃないか…?」
そんな思いが頭をよぎる。最新型のパソコンは、確かに処理速度は速いし、画面も綺麗だ。しかし、太郎にとっては使い慣れた古いパソコンの方が、よっぽど快適だった。
「あーあ…せっかく高いお金を出して買ったのに…」
太郎は落胆し、新しいパソコンを前に途方に暮れた。
(…いや、まだ諦めるのは早いぞ!)
太郎は気を取り直した。
「よし、まずはこのパソコンについて thoroughly 調べてみよう。きっと使いこなせるようになるはずだ!」
インターネットで情報を集め、マニュアルを読み込み、太郎は新しいパソコンとの格闘を始めた。
使い勝手の悪さに悩まされながらも、太郎は少しずつ新しいパソコンに慣れていった。キーボードの配列も、マウスの感度も、徐々に自分の手に馴染んでいく。新しいソフトの使い方も、少しずつ理解していく。
そして数週間後、太郎はついに新しいパソコンを使いこなせるようになった。
「ふぅ…やっと慣れたよ」
苦労の末に手に入れた快適な作業環境。太郎は満足そうに、新しいパソコンで仕事を始めたのだった。
…しかし、心のどこかで、古いパソコンへの愛着が消えることはなかった。
「…やっぱり、前のパソコンも捨てられないなぁ…」
太郎はそう呟き、押入れの奥にしまわれた古いパソコンに、そっと別れを告げた。