カナの体調は一進一退ではありますが、それでも頑張って大学で学ぶ姿を見ていると私も親としてシャンとしないといけないと痛感しますし、カナをもっと支えられるよう、「仕事」も「親としての心の持ち方」も頑張っていかないとだめだなあと思うばかりです。

 

トシさんとの喧嘩は、今あらためて考えても完全に私が悪いので、もうトシさんに会うことは出来ません。

感情が昂ってしまったとはいえ、ひどい言葉をトシさんにぶつけてしまった私ですので、もうトシさんに会う資格はない。

 

「人間そんなときもあるのだから、謝ればいいじゃない」と思う方もいらっしゃるかもしれないのですが、私は子供の頃から父親や大人たちの言葉に傷つけられてきましたし、その影響で「どんなに謝られても、一度ぶつけられたひどい言葉による心の傷は消えない」と考えているので、そんな私が人様に対して「自分が一番してほしくないこと」をしてしまった以上、謝っても謝っても、私自身の気が済まないというのが、「もうトシさんには会えない」と考える理由の一つです。

 

ここまで私が思い詰める状況であり、となれば「一体トシさんと何があったの?」という話もしなければ筋が通らない気もするのですが、その詳細を文章化しようとすると今も私は苦しい悲しい気持ちに支配されてしまってキーボードを打つ指が動かなくなってしまうため、自分でも「文章化すればスッキリするだろうに、それが出来ない自分」にもやもやするばかり。

 

とはいえ、ずっともやもやし続けることも苦しくて切なくて、そんな「もやもや」を晴らすべく、少しでもこの場に吐き出してみようと今思い立ったのでこうして書いてみると、ようは「カナの不調が続き、更にカナの持病は一生治らず、うまく付き合っていくしか無い病気であることを再確認したことで、カナを産み育てた私が母親としての罪悪感に苛まれすぎて卑屈になり、こんな大変な人生にトシさんを巻き込むわけにはいかないという想いから、トシさんに別れ話を切り出した」というのがざっくりとした説明になるのですが。

今まで何度もそういう事がありながらもトシさんが縁を繋いでくださっていて、私の本心としてはそれが本当に嬉しくて救いだったのに、トシさんの御家族や亡くなった奥さんのことを思うとどうしても「トシさんの人生を邪魔してはいけない」という気持ちのほうが勝ってしまった私がまた「私達の縁はもう終わりにしましょう」と言ってしまったことで、トシさんもさすがに怒ってしまった、というわけなんです。

 

 

っていうか、そもそも私達は「会うことはあってもそれだけ。ひたすら話すだけ」の間柄でしたし、自分にとって相手がどのような存在であるのか、とりわけ「恋愛感情的な面ではどうなのか」ということすら語り合う機会はありませんでしたので、傍から見れば「ただの友人関係だった中年の男女二人が疎遠になるだけ」だとは思うのですが、じゃあいざ「恋愛的な関係になりましょう」ということになったとしても、それはそれで私達の間には葛藤や躊躇いが生まれるのだろうとも思う。

 

トシさんの「口には出さない本音」を私が知ることはもちろんないのでわかりませんが、私は正直なことを言えば「トシさんに対して恋愛的な感情を持つ自分に気づきつつ、だからこそそういう話題は極力避けてきたし、考えないようにしてきた」部分がありましたし、そんなことを考える自分に気づくたびに「伴侶と死別した者同士の恋愛って難しいんだな」ということを痛感していました。

 

これがもし「何らかの理由があって離婚した者同士」だったのだとしたら、私とトシさんの関係における展開はもう少し違ったのかもしれない。

でも「本当はもっと一緒にいたかったのに、もっと一緒に生きていたかったのに、その伴侶と死別してしまった私達」という人間は、はたして新しい出会いと恋愛に進んでいいものなのだろうか。

 

志半ばで津波に飲まれて逝ってしまった伴侶を救うことも出来ず、生き残ってしまった私達が「新たな幸せや癒やし」を手にしてしまっていいのだろうか。

 

いや、そんなのダメだし、自分と同じように生き残った子どもたちが許すわけがない。きっと子どもたちを傷つけることになる。

 

ただでさえ幼い頃に大震災を経験し、子どもたちなりの「深い心の傷」を負ったであろう子どもたちを蔑ろにすることは絶対にできないし、親としてそれは絶対にしてはいけないこと。

 

そう思えば思うほど、私は「自分の幸せ」からトシさんの存在を排除しようとしましたし、とうとうそれをトシさんにも知られてしまって、、、、、、今に至ります。

 

 

ああ、やっぱり、私が悪いですね。悪すぎて呆れてしまうばかりです。

 

 

あの夜、一度縁を切ろうとした私の手をトシさんが掴んで引き戻してくださったのに。

 

私はまたその手を振り払ってしまい、トシさんを傷つけてしまいました。

 

 

そんなこともあり、結局連休会う予定だったトシさんと実際似会うことも無く、朝晩挨拶を交わしつつお互いの安否確認をしていたLINEもずっと途絶えたままです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナがまた大学で倒れてしまい、しばらくバタバタしていました。


幸い今は病状が落ち着き、連休明けは大学に通えるようになりましたし、必修科目試験も無事合格したので私もホッとしているのですが


トシさんと、初めて?かな


喧嘩してしまいました。




というか、悪いのは私で。


色々と余裕が無くなっていた私のせいなんです。


トシさんは悪くない。



早く謝らなくちゃと、それはわかっているのですが、自分の年齢が年齢だけに「ただ謝る」ことだけでは許されないし、ちゃんと「謝る理由や、今後どうすべきか」まできちんと提示しないといけない気がして、カナのことや仕事の忙しさも相まって、頭の中がごちゃごちゃで、いっぱいいっぱいで(でもこれは言い訳でしかないですね、情けない)、まだ謝ることが出来ていません。