暁のヨナ第110話の感想です。内容にふれますので、未読の方はご注意ください。

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他話の感想も書いてます。


前回のお話は‥
水の部族領、竜水でゼノの服なのどの買い物をしていたヨナ一行は、水の部族長の娘リリの側近アユラとテトラに偶然再会する。彼女らからリリの近況を聞くヨナたち。水呼城を追放された身ながら、今度は斉国(せいこく)に行こうとしているリリの護衛を依頼される。



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水の部族領 仙水 リリの屋敷

「リリ様、いけません !アユラ殿とテトラ殿が戻られるまでお待ちください」
「アユラとテトラは反対するわよ」
「ですからおやめ下さい。斉国にで出向かれるなど」

ひとりで行こうとするリリを、駐屯兵団隊長ラマルがひきとめようとしているが、リリはずんずんと歩いていく。

「うふふ。リリ様、油断も隙もありませんわね」

ふいに声がして、ギクリとして振り向いたリリの前に現れたのは、アユラとテトラが連れてきたヨナとその一行だった。

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ヨナたちは敷地内に作られた池の周りに群がっている。リリの父が『牢獄』として用意した屋敷の池には鯉が放たれているのだ。

「ちょっと!なにあれ!」
急にヨナたちが現れ、動揺が収まらないリリ‥。
「なにあれとは不躾ですわね。たまたまお会いしたのでお連れしたのですわ」
「なんでいるのよ。私、これから斉に‥」
「ですからお連れしたのです」

ひとりで他国に行くのは無謀過ぎると言うテトラ。兵は他国に連れて行くことができないが、彼らなら自由の身である上に、無敵の強さだと言う。

しかしリリは水の部族の問題にヨナたちを巻き込みたくない。

「リリ、何でも言って。力になるわ」
いつの間にかそばに来ていたヨナがサラリと言う。涙目のリリ。
「あら?どうしたの?」
「自分がヨナ様たちを助けたいのに、助けられてばかりで悔しいんです」
「アユラっ」
「気にしなくていいのに」
ヨナはリリの頭をなでなでするが、どう反応していいか分からずギクシャクするリリ‥。

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「実はね‥」
リリは仙水の現状について話し出した。
池の周りにいた連中も集まって来た。

南戒からの流通を断ってもなお仙水から消えないナダイ‥。闇市で斉の商人が水の部族の人間に売りつけているという噂があると言う。

しかも斉との国境付近で行方不明者が多発しているらしい。

水の部族が危険にさらされるのを、何としても止めたいと言うリリ。

「ふっ」急に笑うハク。
「そこ、何で笑うの?」
「あ、いや悪い。第二の姫さん現れたな~と」
「ハク」むっとするヨナ。

「苦労するね」とジェハ。
「本当。困ってますの」
「テトラ!」

協力を約束するヨナ。リリももう拒まないようだ。明日国境近くの町を調査することになった。

去りかけたヨナに、テトラが声を掛ける。
「ヨナ様」
「様、付けなくていいのに」
「わがままを聞いて下さり、ありがとうございます」
「ううん。頼ってくれて嬉しい」
「本来ならば、私がリリ様のすべてを支えて差し上げたいのですが‥。あの闘いで、それは叶わなくなってしまいましたから‥」

四泉で受けた傷に触れるテトラ。

「リリ様をよろしくお願いします」


☆☆☆
夜になり、ヨナはリリの寝室で共に寝ることになった。寝間着もリリに借りた。

男どもは大部屋で雑魚寝の様子。
キジャは屋根のある寝床とふわふわの布団に寝られる幸せをかみしめている。
ゼノは枕投げを始めてユンに叱られている。
枕を顔面に受けるシンア‥。
ジェハに一杯どうかと誘われ、それに応じるハク。

ヨナはリリの布団にもぐりこみ、ガールズトークが始まりそうだ。

「水呼城から追放されたって聞いてびっくりしたけど、元気そうで良かった」
「当然よ。今回のこともお父様に叱られるかもしれないけど、黙って見ているのは辛いの」
「うん」
「あの国王に直接相談できたら、少しは聞いてくれるかもしれないけど」

言ってしまってからリリはハッとした。

そうだ。この子にとってスウォン陛下は‥

「ごめん」
「ううん」

「確かにスウォンは‥動いてくれるかもしれないわね」
ヨナの言葉に少し驚くリリ。
「あの人は、王位を簒奪したのよね。あんたにとっては敵‥でしょ?それなのにそんなふうに言えるの?憎いん‥でしょ?」

ヨナは答えない‥。

「ごめん。私ったら配慮のないことを‥」
「父上を殺されて、城を出てすぐはただただ悲しくて許せないと思っていたわ。あんなに優しかった人がどうしてって」

暗い表情で淡々と語るヨナ‥。

「でもこの国を見て、火の部族の反乱や、仙水でのあの人を見て‥。スウォンは父上とは違うやり方でこの国を守りたいのかもと思い始めたの」
「仇を討ちたいとは思ってないの?」
「この国には強い指導者が必要なの。今私情でスウォンを討てば、国の混乱を招くだけ。スウォンが私利私欲で悪政を敷いていたのなら討ちに行ったかもしれないけど。今私がやるべきことは仇打ちではないわ」
「そうだけど‥。じゃあ‥」
「私が仇を討たなくてはという思いに駆られたこともあったわ。でも本当は、スウォンのこと許せないと思っていても、本気でころしたいと思ったことは一度もないの。あの人が私やハクに見せた優しさが、すべて嘘だと、どうしても思えないの」
「ヨナ‥。もしかして、あんた‥。スウォン陛下のこと‥」
リリはヨナを抱き寄せる。
「今はね、あの人のことを知りたいと思うの。あの人が何を考え何を成したいのか、その時私はどうすべきか。城にいた時とは違う気持ちで彼を知りたいと思うのよ」
「でもあいつは?」
「え‥」
「ハクよ。あいつは‥」
「たぶんハクはスウォンを絶対に許さない。この国にとって、例えばスウォンが正義でも。ハクは誰よりも‥誰よりもスウォンを信じていたから‥悲しみが癒えることはないの」


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「ハク、起きてたの?」
「姫さんこそ」

ヨナはなかなか寝付けず庭に出てみると、池のそばにハクが座っていた。他のみんなは枕投げすぎて行き倒れるように眠っているらしい‥。

「にぎやかになったもんだ」
「あ‥ちょっと待ってね」

小走りに部屋に戻り、再び庭に出てきたヨナ。

「何です?」
「いいから」

ハクの首に何かを掛ける。驚くハク。

「あげる」

笑顔のヨナ。

「この前の竜水で買ったの。渡しそびれてたから。青金石は癒しと幸運の守り石なんだって。綺麗でしょ?」

薄いガラスのかけらのようなものに穴を開けて紐を通したシンプルな首飾りだ。

「贈る相手に願いを込めたら守ってくれるって聞いたから。ハクに幸運が訪れるように願っておいた」

無言で石をながめるハク。

「‥‥ハク?」
「まったく‥。こういうのは男が女に贈るもんですよ」
「大丈夫よ。お守りなんだから、男性が付けても」

「付けてね」
「‥‥はい」
「‥」
「‥」

「‥‥じゃあ、おやすみ」
ハクが何も言わないので、つまらなそうに部屋へ戻ろうとするヨナ。

ハクは立ち去ろうとするヨナの手を握った。

「ハク?」

うつむき、何も言わないハク‥。

「なに?手、痛いよ」

「‥‥ありがとうございます。すげぇ‥嬉しいです。大事にします」

「なんか、ハクが素直にお礼言うの珍しい。喜んでくれたなら幸運の守り石の力ね」

「姫さん。あんたが幸せになってくれたなら、俺はそれで十分幸せですよ」

三日月と無数の星々のひかりがふたりに降りそそぐ‥‥


☆☆☆
ヨナが寝室に戻った気配で、リリは目が覚めた。ヨナを見ると‥泣いている。

「え?ちょっとどうしたの?どこか痛いの?」
「わかんない」
「わかんないって‥」
「嬉しいのかもしれない‥」
「どういうことよ。やだヒドい顔。手ぬぐい手ぬぐい‥」
「リリがいてよかった」
「何いってんのよもー」


ハクの言葉がこんなにも嬉しくて苦しい‥

知らなかった‥

いつの間にか私にとって、こんなにハクは特別なんだ‥







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感想‥‥

一気に斉国へ行っちゃうのかと思ってたけど、リリのおうちでの再会まででした。

次回からは国境近くの町での展開になりそう。緋龍城を離れると弱ってしまう四龍たちはどうするのかと思ってたけど、とりあえず国内にいるみたいですね。

船で斉に入る‥なんてことも予想しましたが、なさそうかな?

やっぱりリリが追っているのはナダイ‥。ジュンギさんと密談していたスウォンも当然からんでくるんでしょう。また会っちゃうのかなー。ハクはどうするんだろ。

今回も戦闘はあるでしょうね~。ヨナたちは嫌がりそうですが、私はやっぱりゼノのド派手な戦闘が見たいな。

ヨナがリリにスウォンに対する気持ちを赤裸々に語り出したので、ドキドキしました。ヨナの本音、久しぶりな気がします。リリにだからこそ言えたのでしょうね。リリ、ありがとう!

でもリリと話すヨナの顔がホントに暗くて怖かった‥。無理に笑顔つくったりしないのは、リリに心許してるからってことかな。

『ハクの悲しみが癒えることはないの』

なんかズドンと来ました。スウォンとハク、共通の敵を前に一時休戦して共闘‥なんて展開を期待してみましたが、無理そうです。

暁のヨナ、最終回なんか来て欲しくないですが、もし終わらなければならない事情ができたときは、決着がつかないまま終わって欲しい‥。なんだその最後!と、みんな怒っちゃうような中途半端で終わって欲しい‥。

だってどっちかが死んじゃう最後しか思い浮かばない。まあおそらくスウォンが‥。

むしの息のスウォンの言葉に、ハクはスウォンを許さずにいられなくなる‥。ハクがスウォンの名を叫び、スウォンは息絶える‥。みたいな展開しか、想像力のない私には思い浮かばないですから‥。

頭の中で何百回も考えてることですが、スウォンならイル陛下をころさずとも『強い指導者』になれましたよね‥。なんであんな極端な手段をとったんでしょうね‥。

そしてヨナのハクへの気持ち。みーんな気付いていましたが、とうとうヨナも確信に至ったようです。でも私にはますますフラグにしか見えなくなってきました‥。

実は四龍たちが、仲良過ぎるのも気になってます。誰かが仲間の元を去り、まさかのスウォン側へ‥なんてことはさすがにないか。

私はひねくれ過ぎてますね。