三国峠を越えて

勇也の運転する車は

苗場スキー場の駐車場に入った。

 

各々が座席をちょっと倒し

エンジンを付けたまま暖を取り

リフトが動き出すまで皆で仮眠を取る。

 

俺は仮眠の途中でトイレに行きたくなり

そっと助手席の車のドアを開けて

ホテルにトイレを借りに行く。

 

外に出ると凍てつくような寒さだ。

 

吐く息が真っ白に長く続く。

 

ホテルのトイレで用を足し

帰り際に駐車場を横切ると

先ほど三国峠のドライブインにいた

ツアーバスが止まっていた。

 

俺たちと同じように

リフトが動くまでエンジンを付けたまま

皆さん仮眠を取っているようで

多くのバスの窓は

カーテンが引かれていた。

 

でも

一つだけ

窓のカーテンが空いており

そのバスの窓から

薄暗い駐車場のライトに照らされて

ゲレンデをじっと見つめる一人の女性が見えた。

 

思わず立ち止まり

その女性を見つめた。

 

その時

俺の視線に気が付いたのか

その女性と目が合った。

ちょっと

お互いに視線を合わせたが

直ぐに

その女性は窓のカーテンを引いてしまった。

 

その後

俺が勇也の車に戻った時に

ドアを閉める物音で

勇也が目覚めてしまったようだ。

 

「済まない。トイレに行っていた」

 

「あー、そうか・・・」

勇也が眠そうな表情を見せる。

 

「雪の妖精を見た気がする」

 

俺が呟くと

勇也が

「あー、何だって?」と

目を擦りながら聞いてくる。

 

「いや、何でも無い・・・」

俺が答える。

 

「・・・確かに雪の妖精のような人だった」

 

また呟くと

勇也は面倒くさそうに体を横に向けた。

 

その時に山の稜線が微かに明るくなり始めた。