いきなり度付かれて

振り返った先に

由季さんが笑いながら立っていた。

 

「えっ、何で?」

 

由季さんが答える。

 

「コンコン」

 

「キツネは夜行性なのだ」

 

「なので、夜のスキーは得意なのだよ。瓶汰くん」

 

由季さんがグローブの両手を

頭に添えて

手の平をお辞儀させた。

 

その仕草を見て

ドッキっとした。

 

心臓が鋼の様に躍動する。

 

(俺は・・・)

 

黙っていると

由季さんが話始めた。

 

「コンコン、一緒に滑りましょ。飲兵衛さん」

 

由季さんが優しく話しかけて来る。

 

「ああー、あー」

 

何だか俺は

感情のコントロールが効かなくなっていた。

 

(俺は・・・やはり・・・)

 

(いやいや、やっぱり飲み過ぎたんだ・・・)

 

由季さんに誘導されるかたちで

4人用リフトに座る。

 

「ちょっと寒い・・・」

 

由季さんが俺に体を寄せて来る。

またもや心臓が鋼の様に躍動した。

 

(マズい、なんかヤバくなってきた)

 

罪の無い正直者だ。

 

(やっぱり酔っているからだ)

 

そうは思っていても

自分で分かって居た。

 

自分の気持ちがどうなのかが・・・

 

そう思っている内に

リフトは終点に着いた。

 

滑る準備を整え

滑り出そうとしたその時に

後ろから由季さんが

俺の背中に抱き着いてきた。

 

(えっ!?)

 

俺は心が沸騰してしまったようで

冷静さを保てなくなった。

 

(なんか、頭がクラクラしてきた・・・)

 

クラクラしながら

辛うじて声を出した。

 

「ハハハッ。このまま一緒に滑ろうか?」

 

「うん」

 

そのままの状態で

ゲレンデを駆け下りた。

 

最初はちょっと急な斜面だったが

ゲレンデの下に近づくにつれて

斜面が多少なだらかになってきた。

 

その時

お互い気が抜けたのだろうか

チョッとした雪のギャップに

板を取られて

同時にコケてしまった。

 

俺はコケながら

横滑りに

ちょっと下に流されて

由季さんと離れてしまった。

 

見上げると

由季さんが仰向けに倒れている。

 

「やばい・・・」

 

俺は焦った。

 

あの時と同じだ。

 

慌てて

俺は直ぐに板を外し

由季さんに駆け寄った。

 

「大丈夫か!由季?」

 

由季さんは仰向けに倒れているが

目を瞑ったままだ。

 

「おい!大丈夫か?由季」

 

両手で肩を掴み軽く揺する。

 

その時に由季さんが

大きな目をパッチリと開けた。

 

「セクハラじゃあー」

 

「それに人を呼び捨てにしてー」

 

その言葉を聞いて俺が答える。

 

「良かったー。無事で・・・」

 

その瞬間

ホッとしたため脱力し

両手を地面に付いて

項垂れてしまった。

 

それを見た由季さんが

慌ててすごく申し訳無さそうな

顔をして言う。

 

「ごめんなさい」

 

「ふざけ過ぎだよね・・・」

 

「ごめん・・・」

 

その時に

2人の目が合い

見つめあった。

 

由季さんがそっと目を閉じる。

 

その瞬間に

由季さんの唇に

俺の唇を重ねた。

 

唇が離れた後に

由季さんの目を見つめた。

 

「なんか、キツネの恰好をした雪の妖精に惚れてしまったみたいだな」

 

その言葉を聞いて由季が答える。

 

「ふふふ。気障ねー」

 

「キツネに化かされているだけかもよ」

 

それをきいて俺が答える。

 

「そうだとしても、自分の気持ちには正直でいたい」

 

その言葉を聞いて

由季さんが嬉しそうに笑う。

 

「好きだよ。由季」

 

自分の正直な心の言葉を放った。

 

「私も瓶汰が好き」

 

「瓶汰が私を助けてくれた時からずっと」

 

再び唇を合わせた。

 

照明に照らされ

キラキラしたゲレンが

暖かく二人を包んで行った。