(はじめてこのブログをご覧になる方は、第1話 よりお読みください。)

 

第77話 宿題


カウンセリング第3週目。

ちゃんと時間通りだ。遅れないよう、早めに来てくれているようだ。
今日も習い事の帰りか、花の大きな包みを抱えている。

花の明るさとは対照的に、彼女自身はなんとなく暗いイメージだ。


「こんにちは。前回の宿題はやってみました?」


「はい。コンプレックスの修理ですよね。私なりに

いろいろと考えてみました。」


まじめだ。言われたことはきちんと守る。


「どんなことを考えました?」


「私、暗いし人見知りだから、その場その場に

なかなか溶け込めなくて。そんな自分がキライ

だったんです。でも、学生のころ、仲のよかった

友達に、『癒し系だ』って言われたことがある

を思い出したんです。」


少し恥ずかしそうに彼女が言った。


「私もそう思いますよ。」


これは素直な感想。暗いというのではなく

大人しすぎるというのが私の意見だ。


「え?ほんとですか?えっと、だから、暗いって

決めつけるんじゃなくて、自分を客観的に自己

分析してみたんです。」


「うん、それで?」


「ノートに書き出してみました。見ていただけますか?」


そういうと、足下に置いたバッグから薄いブルーのノートを取り出し、僕の前に広げた。


「ふむふむ。・・・長所は、やさしい、大人しい、

弱い人を助けたい気持ちが強い、人の痛みが

わかる、人のことを気にする、礼儀正しい。」


「恥ずかしいですね、自分で長所を言うのって。」


「いえいえ、客観的に自分を見るってとてもいい

ことですよ。そして、短所は、小心者、人のことを

気にしすぎる、自信がない、口下手、気が弱い、

グループに入っていけない、内向的。」


「どうでしょう?」


「合ってるんじゃないですか?(笑)」


「よかった、のかな(笑)。それでですね、書き

出した長所と短所をよく見てみたんです。

そしたら、短所と長所って表裏一体なんじゃ

ないかなって思えてきて。」


「ほう!」


「もしかして、短所なくしたら、長所も消え

ちゃうんじゃないかな、と。」


「うんうん。それで?」


短所だけど長所でもあるのなら、なにも

悲観することないんじゃないかって。

このままでいいじゃないって。」


「開き直れた?」


「はい!そうみたいです。100パーセントと

いうわけではないですけど、ずいぶんラクになりました。」


というわりには今ひとつ、笑顔が出てこない。


続く・・・