(はじめてこのブログをご覧になる方は、第1話 よりお読みください。)


第21話 防御失敗




健治:「松本さん、上司に価値観を押し付けられたって

言ってましたが、具体的になんて言われたんです?」


松本:「OA機器の営業で、僕が売れないのは、

根性を出さないからだって。」


健治:「それで?」


松本:「他の人は、しつこく電話をかけたり、強引に契約を

迫ったり、何度も押しかけたり・・・」


健治:「ああ、いますね、そういう営業マン。」


松本:「上司もそうして売ってきたもんだから、

とにかくお客様と話して来いって、僕に自分の

やり方を押し付けてきたんです。」


健治:「なるほど。で、松本さんは、どういう営業スタイル

だったんですか?」


松本:「とにかくわかりやすいプレゼン資料を作って、

見込み客に見せる、という営業法でした。」


健治:「結果はどうだったんですか?」


松本:「それがまったく・・・。かなり時間をかけてプレゼン資料を

作ったんですが・・・。」


健治:「なぜ売れなかったんだと思います?」


松本:「いざ売り込みという段階になると、直接会って

お客様とお話するわけですが、話がうまくできなくて・・・。」


健治:「上司はそれを見抜いてて、だからお客様と

話をして来いって言ったんですね。」


松本:「わかるんですか?」


健治:「はは。実は、私も営業をしていたことがあるんです。」


松本:「ああ。」


健治:「ということは、上司は自分の価値観を押しつけようと

したわけではないかもしれませんね。」


松本:「はあ。」


健治:「恐らく松本さんの上司は、松本さんに一番必要な能力を

磨いて欲しかったんだと思います。それは、セールストーク。

しかし、松本さんは、トークが苦手だから、プレゼン資料で

勝負しようと思った・・・。」


松本:「・・・・・・」


健治:「わかりますよ。人間って傷つくことから自分を守る

ために、無意識に防御をしてしまうんです。松本さんが、セールス

トークを避けて、プレゼン資料作りに一生懸命になったように。

もちろん、いろいろ試すという意味で、それは悪いことじゃない

んですよ。でも・・・」


松本:「でも、結局、仕事がうまくいかなくて辞めた・・・。

それより、絶対避けては通れない“セールストークの壁”を

超えることがそのとき、もっともするべき最高の防御だった

んですね?」



健治は、笑顔でやさしくうなづいた。


(この若者は心配ない。)




続く・・・・・・・