(はじめてこのブログをご覧になる方は、第1話 よりお読みください。)



第18話 ニートのトラウマ


別室の相談室では、オーリーこと桜井健治が、
若い男性の相談を受けていた。


松本 学、25歳。
一見どこにでもいる普通のやさしそうな若者だ。


健治:「ということは、大学を出てから入った
大手の企業を半年だけ勤めて退職したということですね?

それから、今まで仕事についてないということですが、

何か事情があったんですか?」


松本:「・・・・・・はい。人間関係が原因で・・・・・・。」


よく観察してみると、目がおよいでいて、落ち着かない様子だった。

彼は、ニート生活から抜け出したくてここに来たのだ。



健治:「人間関係ですか・・・。よかったら何が
あったか、話してくださいませんか?」


そう健治はゆっくり、やさしく言うと、相手の言葉が出るのを待った



松本:「僕は、事務機器の営業として、法人のお客様を
相手に事務機器を売る仕事をしていたんです。」


健治:「パソコンとかコピーとかのOA機器を、企業に売る仕事ですね?」


松本:「はい。売り上げが悪いと上司から怒鳴られるし、
お客様とはうまく話せないし・・・。口下手で小心者だから・・・。」


健治:「営業が苦手だったと・・・・。」


松本:「はい。特に売り込むのがダメですね。強く言えないんです。

自信がないんですね。だから人間関係も苦手なんです。」


健治:「昔から?」


松本:「はい。中学生のとき、女子にひどいこと言われてから他人が怖くなって。」


健治:「何かあったんですか?」


松本:「学校に当時好きだったアニメの下敷きを持っていたんです。
はじめは気づかなかったんですけど、女子に何か言われてるような
気がしてたら、あるとき、はっきりと聞こえたんです。」


健治:「何が聞こえたんです?」


松本:「“チョーキモい”って。それも、2回も。」


健治:「2回も・・・。それは傷つきますね。」


松本:「そのときから、一切女性とはしゃべれなくなったんです。」



それが原因でトラウマになっているのだろうか?

健治は決めつけることなく、もう少し質問を続けた。



健治:「そうですか・・・・・・。それ以前は、どんな子でしたか?」


松本:「まじめでおとなしい子だったと思います。普通だったと
思うんですが・・・。」


健治:「では、その事件があってからの人間関係は?」


松本:「あたり障りないようできるだけおとなしくしてました。」



健治は、何か思いついたかのように言った。



健治:「わかりました・・・。松本さん、もし、人間関係が
改善できる方法があるとしたら、知りたいです?」


松本:「その手の本は、たくさん読んでみたんですが・・・。」


健治:「読んでも効果なかったことないです?」


松本:「はい。結局変わらなかったです。」


健治:「何でそういった本を読んでも変わらなかったと思います?




続く・・・・・・


◆今回の小説の解説ブログ→ 「仕事が楽しくなる人間学