3月11日、アミューあつぎ映画.comシネマにて行われた
『ゆずり葉の頃』トークショー付き上映会へ。
『ゆずり葉の頃』
主演 八千草薫さん
監督 中みね子さん
トークショー登壇
中みね子監督、
岸部一徳さん
【本編の感想】
※ネタバレありますので反転お願い致します
着物屋の市子(八千草薫さん)はある日突然家を出て、
戦争中疎開していた軽井沢へ赴く。
その目的は世界的な画家である
宮謙一郎(仲代達也さん)の展覧会。
実は宮は市子が疎開先で出会った寺の少年であった。
彼に飴玉を貰い、龍神池の伝説を知った幼い日の市子。
美しくも儚い思い出を探しに軽井沢へ来たのだった。
それから苦労を重ね、夫を病気で喪いながらも
敗戦後も一人息子(進)を育て上げた市子。
進(風間トオルさん)は外国で仕事をしている。
日本に住む妻とも今後について
話さなければならないと思っている。
そんな彼が一時帰国をして
母親の市子に会おうとするが何度もすれ違ってしまう。
進の奔走を知らずに
宮の展覧会で見られなかった絵「原風景」を探す市子。
珈琲歌劇のマスター(岸部一徳さん)に
バス停までの道、隠れ家的名店、宿泊先などを教わったり、
人づてに宮へのアトリエに紹介してもらったりして
なんと宮との再会を果たす。
そこで「原風景」に出会うこともできた。
しかし宮は緑内障を患っており、市子に気づかない。
オルゴールから流れる『キラキラ星』を二人で踊り、
目で見る代わりに宮に触れられた後、
市子は別れ際宮夫人に飴玉を贈る。
市子が去り、夫人に飴玉を手にのせてもらって初めて
宮は市子が少年の日に出会った娘だと気づく。
アトリエからの帰り道、
龍神池に寄った市子と進がようやく出会う。
バスを待ちながら、己の進退について話し合う二人。
ここからは感想などを。
全体として穏やかで上品で
ときめきのちりばめられた美しい作品でした(*^^*)
八千草さんがとっても可愛らしくて。
個人的なことで恐縮ですが、最近亡くした私の祖母が八千草さんに少し似ていて、もっと会って話を聞いておくべきだったと後悔しました。
幻想的で美しくて少女漫画のような世界観でした。
再会した宮さんにも素性を明かさず、
ファンとして接する割り切った態度もいいですね。
互いに結婚して別の家庭を持っているからこそでしょうか。
市子さんを助けてくれる軽井沢の人々も優しくて、
市子さんの可愛らしさ故かなと思ったりもして(笑)
それでも市子さんは戦争で苦労をしている分、
これくらい恵まれて然るべきだよなと思ったり。
全てがきらきらした雰囲気でしたが
その間に戦争の影響が影を落としていて、
暗さがあるからこそ
ぐっと煌めきが引き立っていました。
大きな盛り上がりのある作品ではありませんが、
折々で思い出を取り戻していく過程が
池の水面のように静かで綺麗でありました。
その水面に飴玉を投げ入れるような出来事が
宮さんとの再会であったのでしょうか。
それもすぐに波紋は消え、穏やかな水面に戻るのでしょう。
脇を固める俳優さんたちも魅力的でした。
六平直政さんや本田博太郎さんに加えて、
素敵な低音とベーシストの一面を持つという点で
岸部一徳さんと共通する嶋田久作さんもご出演でした^^
【了】
【トークショーレポ】
トークも震災のことに触れた
素敵なお話をたくさん聴けました。
上映開始前に厚木市市長からのご挨拶がありました!
ビックリ。
今回の上映会はあつぎ映画祭の一環だったので
あつぎ映画祭の歴史をお話ししてくださり、
一度閉鎖してしまった映画館を復活させ
「映画館の無い町厚木」を
何とか変えようとされてきたことを伝えてくださいました。
トークショーが始まる前に、
東日本大震災で亡くなられた方へ黙祷を致しました。
登壇された中監督が一徳さんのことを
「私の精神安定剤」と仰っていて何だかわかるなぁ。
初見の方が多く、監督と一徳さんが「有難う御座います」と。
中監督「騒がしい時代にこののんびりした映画を観に来てくださって有難う御座います」
司会の方が「厚木は初めてですか?」と訊かれ、
一徳さんが「テレビのロケとかで来たことありますね…」
と自己紹介する前に話し始めてしまって
「ていうかその前に挨拶しないとね(笑)」となる一幕が(笑)
一徳さん「3月11日、日本人が忘れてはいけない日にこうやって上映されてトークするっていうのは特別な感じがします。公開から時間は経っているんですけど、その時よりも今日は満員だなと(笑)でもなんか嬉しいですね」
中監督「岸部さん…一徳さんって言いますね、許してくださいね」
一徳さん「僕は岡本喜八監督の作品に何本も出させていただいて、中監督はその時からプロデューサーで、みね子ママって言ってたんです」
中監督「今日もママでどうぞ(笑)」
一徳さん「中監督って言うのはピンと来ないんです(笑)でも初めて映画を撮られるってことで、これは何があっても出なきゃいけないなと」
一徳さん「僕も今年で古稀になりまして。こういう気持ちが優しくなれる作品がいいなぁと。却って僕が監督にありがとうと言いたいです」
中監督「精神安定剤と申しましたのは、アメリカで大変な映画を撮っていた時に、私は一階に一徳さんが同じコテージの二階に泊まっていて電話番をしてくれまして。帰ったらふっと一徳さんが居てどれだけ心が安らいだか。それからずっと精神安定剤です。彼が現場に居てくれるだけで揉め事が無いんです」
一徳さん「居るだけじゃないですけどね(笑)芝居もしてます」
震災のお話。
一徳さん「僕は小さい事務所やっているのですけど、事務所で何かするにしても被災地に皆で行ってたりして。仮設住宅に行って話を聞いたんですけど、話を聞くっていうのは難しいなと思いました。被災されて家族を亡くされた方のつらいお話を最後まで聞かないとその人に何があったかわからない。表面的にそれを感じることはできないので行って良かった。僕たちは違う所に住んでたから被災しなかっただけで」
中監督「うちの母は東北出身で、私は疎開を致しました。なので東北は故郷です。震災の後訪ねていきましたら人も居なくて、建物をただ見るだけでした。ふと見るとご夫妻が花を植えているんです。「訪ねてきた時に何も無いと寂しいから」って。私言葉が出なくて…ご苦労様って言うことしかできなくて…」
一徳さんは被災地へ赴かれているのですね。
一徳さん「ママも80ですか?」
中監督「そうなんです!」
一徳さん「仲代さんだって84だし、八千草さんも…あんまり言っちゃいけないかな(笑)でもお元気ですよね。もっともっと頑張ってもらいたいなと。そんなこと言って僕も70ですけどね(笑)」
中監督「もっと早く死ぬつもりでした(笑)」
皆様長くお仕事していただきたいです!
中監督の作品ももっと観たい…!
一徳さんの「なんでもやりますよ(笑)」に対し、
中監督「皆さん(これからも一徳さんを)見たいですよね」
お客様が賛成の拍手(勿論私も)
この後は質問コーナーでした。
4回ほど質問がなされたらお時間になってしまいました。
階段について、銀座一穂堂についてなど。
ザ・タイガース時代のことも
トークショー後の花束贈呈の時に
写真撮影のお時間が頂けました!
質問にたくさんお答えしていただいたせいか
撮影の時間があまり無かったので、
中監督をブレずに撮れなかったのが残念。
でも一徳さん、スーツ姿がカッコ良過ぎる…(*ノωノ)
ストライプの入った上下と黒のベスト、
黒縁眼鏡に白いシャツ…花束も良くお似合いです。
綺麗で繊細な作品と出会えて良かったです。
トークショーに来ていただいた
中みね子監督と岸部一徳さんに
改めて感謝致します!