タイガースの意外な秘密1

タイガースの意外な秘密2



1968年4月4日『週刊平凡』
【以下は記事抜粋】

特別取材
ジュリーの“恋人”久美かおりがのぞいたザ・タイガース5人の意外な秘密

タイガースがはじめて主演した映画『世界はボクらを待っている』は二十一日、ぶじクランク・アップした。
ジュリーの“恋人”に抜てきされ、仕事も遊びもタイガースと行動をともにしてきた久美かおりが、彼らと過ごした一か月のあいだに発見したタイガースの意外な秘密は……。


タイガースと過ごした一か月

『世界はボクらを待っている』の最終カットの撮影が、三月二十一日、東京・砧の東宝撮影所のセットで行われた。
『ダルタニアン』で仮縫いをしていたザ・タイガースの耳に、とつぜんシルビア(久美かおり)の悲鳴が聞こえる。とびだしてみると、アンドロメダ星の秘密警察に追われているのだった。そこですさまじい格闘がくりひろげられ、シルビアはタイガースによって救出される――。
 この撮影が終わったのが午後五時十分。やがてスタジオを去るタイガースと久美かおりに、嵐のような拍手がわき起こった。それは一か月間、この映画の撮影で彼らと苦楽をともにした、監督以下スタッフたちの熱っぽい拍手だった。
「おつかれさまァ」
「こんどまた、いい映画を作ろうね」
 離れてゆく両方の誰からともなく、暖かいことばがおくりかわされ、拍手はいつまでも鳴りやまなかった。
 ところで、とつぜんジュリーの恋人に抜てきされ、ちょうど一か月間、タイガースといっしょに仕事をした久美かおりの目に、彼らはどう映っただろうか。
 まず総評――。
「二月十三日、東宝本社で行われた発表会で、はじめてタイガースのみなさんとお会いしたときの印象と一か月たったいまと、彼らに対する印象がぜんぜん変わらないんです。あれほどの人気者でありながら、スターぶったところが少しもありません。
 ちょっとヒマができたときなんか、お相撲をとったり、子供っぽい遊びに夢中になって、キャッキャッとさわぐんです。そんなときのみなさんの楽しそうなこと、わたしにはとっても意外な一面に見えました」
 はじめのころは、仲よしの五人のなかに、なかなかとけこめなかった彼女だったが、そのうち、いっしょに食事をしたり、じょうだんをいいあうようになって、すっかりうちとけていった。
 そして、クランク・アップちょっとまえごろになると、彼女とジュリーがふざけすぎて、監督さんにしかられるという場面まで見られるようになっていた。

ジュリーは三枚目?

 では、五人のひとりひとりについて、彼女はどんな印象をもっただろうか。
 さいしょにピーについては
 「ぜったいに疲れた表情を見せない人ですね。ほかのメンバーがゲンナリしているようなときでも、ピーは、笑ってはいないけど、少なくとも疲れた表情だけはけっしてしないんです。
 追い込みにはいって、朝七時から夜十一時ころまで、ぶっとおしで撮影があったり、徹夜明けや、地方巡業帰りでいきなり撮影というときでも、この人だけは、ぜんぜん疲れを知らないみたいなんです。
 あれはきっと、意識的に疲れた表情を見せまいとしているんじゃなくて、性格からくるものかもしれませんね」
 つぎはジュリーについてだ。彼女は、ジュリーに、意外な一面を発見して、びっくりしている。
「世間ではジュリーのことを“もの悲しいムードをもった”とか“孤独なかげを秘めた男”として強調していますけど、その反面、とても三枚目なところのある人だということを発見したんです」
 たとえば、こんなことがあった。
 ある日の撮影でジュリーと向かいあっていた彼女が、ついまちがってしまった。
 本番である。彼女はすくんでしまった。そのとき、すかさずジュリーが監督に向かっていったものである。
「あれ、いまの本番だったんですか?」
もちろん、本番というのは百も承知なジュリーなのだ。だが、彼がこういったとたん、監督のけわしい表情も一瞬になごんでしまった。なんと、とぼけた、やさしさであろうか。久美は涙がこぼれそうだったという。

理論派のトッポに野次馬的タロー

 つぎにトッポ
「五人のなかでいちばん無口なのはジュリーだと思っていたら、ほんとうはこの人だということがわかったんです
 とても無口だけど、でも、いったん話し始めるとまたすごく理論的な人ですね。
 いつかジャズのことを話しあったことがえるんです。わたしはスタンダード・ナンバーが好きで、歌手もペギー・リーとかメル・トーメとかが好きなんですけど、彼はこういって反論しました
“スタンダード・ナンバーはたしかにいい音楽かもしれない。しかし、グループ・サウンズは、現代が求める、現代にマッチしたよい音楽だと思う…”
 三十分くらい、専門的なことをとうとうと話してくれました。自分でじゅうぶん理解し、しかも説得力のある人です。トッポは、なにかをもっているんですね」
 タローについての感想は、こうだ。
「すごくヤジウマ的なところがあるの。傍観者的な感じっていったらいいのかしら。たとえば、ピーとトッポがやりあっていると、そばへきて、だまってエンジンをかけるまねをしているんです。たいへんおもしろい人」
 さて、サリーについてはどうか。
「やはりリーダーらしく、すごく落ち着いていますね。じょうだんひとつにしても、ピーのように、しじゅう陽気ななかからとび出すというのじゃなくて、ときどきなにげなくポツンというひとことが、ツボにはまっているんです。
 昼休みのあと、“さあ行こうぜ”と声をかけるのもきまってサリーだし、演技論のディスカッションでも、そのきっかけをつくるのは、いつもサリーなんです」

忘れられない箱根ロケ

 このように、彼女は五人との一か月のふれあいで、メンバーの意外な素顔を知り、びっくりしたり感動したりしたが、この撮影で彼女をもっとも喜ばせたのは、なんといっても、二月二十七、八日に行われた、箱根ロケだった。これはジュリーとのラブシーンで、この映画のクライマックスであった。
「芦ノ湖にモーターボートを走らせたのも楽しかったけど、もっと楽しかったのは、ジュリーとふたりきりで、ウオーター・サイクルに乗って湖のまん中へ出たとき…」
 久美とジュリー、トッポとサリー、ピーとタローが三隻のウオーターサイクルに乗って、湖心へ向けてこぎだしていく。カメラは岸にあり、その背後には大勢のファンがかたずをのんで見守っていた。ふたりの会話は映画と離れ、なんでもよかった。カメラは、ただ遠ざかってゆくふたりの姿だけを追った。
「芦ノ湖のまん中へ行ったときあたりはシーンと静まりかえって、周囲の山には白い雪が見えるし、とっても神秘的でした。
 この日のことは、いつまでも忘れられないでしょう」
 久美はその日の芦ノ湖の情景を思い浮かべるように、いつか夢見るようなまなざしになっていた。房総半島の白子海岸へロケに行ったとき、久美は、タイガースの、もうひとつの素顔を見たと思った。
「タイガース、とくにジュリーはファンに冷たい」
といわれているうわさをくつがえす事実だった。
「撮影を終えてひきあげるときくたくたに疲れていたのに、“また来ますよ、さようなら”と、ファンの姿が小さくなって消えてしまうまで手を振ってるんです」
 これを知った久美は、どこへ行っても、ファンに「タイガースはけっしてファンに冷たくはない」ということを弁明して歩いた。
「肉体的にも精神的にも、あの人たちはほんとうにくたくたなんです。それでも、できるだけファンをたいせつにしようとしているんです。それを知らないで、ただ、ときにサインや握手をしないからといって、彼らを責めないでください、とわたしが弁護したこともあるんです」

タイガースに教えられたプロ根性

 タイガースとともに仕事をしともに議論しあった彼女は、彼らのさまざまな面を見、つかんだが、けっきょく、ザ・タイガースの人気の秘密はなんだろうか、と考える。
「ひとりひとりが、それぞれ、なにかをつかんでいて、とても個性的な人たちなのに、それでいて、すばらしいチームワークができあがっているんですね。たとえば、ジュリーは神経質な反面、三枚目的だったり、トッポは無口で理論派だったり…その個性をあの人たちは内に秘めて、チームとしては、すばらしい統一をみせる。なにか、そのへんに秘密があるような気がしたんですけれど…」
 この映画は四月十日に封切られる。いま一か月の大任をぶじ果たした久美かおりは、さいごにこういった。
「はじめ映画出演の話を聞いたとき、わたし、映画はあまり好きじゃなかったし、正直なところ、乗り気じゃなかったんです。それが、みなさんとつきあっているうちに、仕事の楽しさをだんだん教えていただきました。そしてもうひとつ、プロ根性というものについても――。これはわたしにとって、たいへんなプラスになりました。
 タイガースと過ごした一か月間にいろいろなことを教えられまた吸収できたことはわたしにとってたいへん有意義でした。そういった意味において、わたしはいま、彼らにお礼をいいたい気持ちでいっぱいなんです」

【了】

ここからは他愛もない感想を失礼致します!
この記事、当時の週刊誌記事なので
全面的には信用できませんが、
なかなかメンバーに迫っているように思えます。

ジュリーは神経質なほど真面目な反面、
人のためにおどけたりすることができる人なのでしょうね。
空気を読んだり、敢えて壊したりできる人!

しかしピーが疲れた表情を見せないのは、
それこそプロ根性全開で意識的にやっているような気がしますね。
完璧主義な性格によって
意識的に元気に見せているという両方のパターンも、
勿論考えられますが。

トッポは何だか納得してしまいました。
普段無口な分、
会話の糸口を見つけると急にお喋りになる
ちょっとシャイな感じの青年だったのでしょうね。

タローは傍観者的な側面がわかる気がします。
物凄く客観的に世界が見えているのでしょうね。
ただ喧嘩を煽って飛び火が来ないようにね!(笑)

サリーのリーダーとしての評価がいいですね。
どんな冗談が現場で言われていたのかしら?
あのいい声でボソッと面白いことを言うんだろうと思うと、
生で聴けた久美さんが羨ましいです^^

普通の気のいい青年たちであることが、
これで当時のファンの方たちに伝わったと信じたいです。