5月7日に行われたイギリス地方選で、極右ポピュリスト政党のリフォームUKが躍進し、与党労働党は、議席を半減させる惨敗に終わりました。この結果は、予想されていたもので、前年(2025年)の5月の地方選でも、リフォームUKが躍進していましたから、その流れがまだ続いていることが示されました。数字を並べると、与党労働党が現有の1998議席から974議席弱まで議席数を半減させ、リフォームUKは、82議席から1358議席とジャンプアップしました。二大政党制の一翼、保守党は427減の738、自由民主党が、142増の812、緑の党が、306増の477という結果になっています。
世界各国の模範となっていた、労働党と保守党の二大政党制がここまで崩壊してしまったというのは、唖然とさせられるところです。多党化の流れが本格的に進展しています。このままの状態が総選挙まで続くとすると、リフォームUKが、政権に参画する可能性は高いでしょう。新興勢力が政治的に台頭するというのは、老舗の政党である自民党が依然として強い日本にいると分かりにくい現象ですが、イギリスでは、定着した政治現象になりつつあります。
ニュースを読むと、インフレ、物価高に現政権が対応できなかったことが与党労働党の敗北につながっていると述べられています。イギリスのインフレは、日本の比ではなく、国民の生活に大きな負担になっているのです。インフレで国民が生活困難を抱えている時に、スターマー首相は、国民の手当削減の政策(年金受給者の冬季暖房手当、障害者手当)を実行しましたから、国民の離反を招いてしまったのです。
もう少し掘り下げたい場合、二大政党制崩壊の原因について、参考となる本を見つけました。『新たなマイノリティの誕生~声を奪われれた白人労働者たち~』(ジャスティン・ゲスト著 弘文堂)という本です。社会学の本であり、アンケートやインタビュー調査の結果をもとに、難解な解説がなされている本書ですが、要旨は明確です。それは、1980年以降の産業衰退の結果、逆境に立たされている白人労働者階級が、極右ポピュリズム支持の温床になっているという指摘です。1970年代までは、白人労働者階級は、国内製造業の工場労働者として、国民経済の基盤になっていましたが、産業衰退により、雇用も不足し、イギリス社会の周辺部分に追いやられてしまいました。そんな彼らが、国家エリートや移民マイノリティに反感を持ち、排外主義を掲げる極右ポピュリズムを支持する現象が生まれていることが、本書で描かれています。
本書が、英語版で発売されたのが、2016年のことですが、10年たった現時点から振り返ってみても、事態は深刻化していると言えます。今回の選挙でも明らかになった、既成政党への不信感は、時間の経過とともに解消されるどころかエスカレートしている事実に向き合わざるを得ません。問題は、白人労働者の支持を受ける極右ポピュリズム勢力という政治集団が、信用のおけるものなのかという点にあります。極右ポピュリズムが政権を奪取した例としては、アメリカのトランプ政権がありますが、突如として関税を引き上げたり、戦争を仕掛けたり、大学の自治を侵したり、デモに軍隊を差し向けたりと、従来の政治の常識では測れない政策を次々と実行していきます。ちょっと表現はひどいですが、トランプ政権は悪魔的という色彩を帯びていると言っても過言ではないでしょう。
このままいけば、3年と2ケ月以内に総選挙行われるイギリスでも、リフォームUKの政権参画は、現実味を帯びてきます。先行するトランプ政権同様、イギリスでも破天荒な政治家が跋扈する事態になってしまうのでしょうか。それとも、労働党、保守党といった中道の政治勢力が挽回して、次回総選挙までに支持を回復するのでしょうか。イギリスの政界からは目が離せません。
