作文でも読解でも文法問題でも
とにかく、生徒に日本語を書かせたら
必ず、頭を悩ませる回答が一つや二つあります。
ただ、そんなところからも
生徒の個性が垣間見えるので
大切にしたいところでもあります。
先日、学期の終わりのテストをした。
そこにあった読解で
なんともいえない回答をした子がいた。
その読解問題の文章は、こんなもの。
“私”は会社に入ったばかりのとき
何もわからなかったが、青木先輩が色々なことを教えてくれた。
パソコンの使い方を教えてくれたり、車で送ってくれたりした。
でも、青木先輩は来月、会社を辞めると言った。
とても残念だ。
今度から新入社員には、私が色々と教えてあげるつもりだ。
授受表現がたくさん出てくる文章で
「青木先輩は何をしてくれましたか?」
なんていう問題がある。
そんな問題の中で
「“私”は、どうして残念だと思ったんですか?」
という問題がある。
普通、みんな
「青木先輩が来月、会社を辞めると言ったからです。」
というような答えを書く。
ただ、一人
こんな答えを書いた子がいた。
「青木先輩と一緒にいたとき、とても嬉しかったからです。」
そんなことは、どこにも書いてない。
書いてないが、きっと
“私”は青木先輩と一緒にいたとき、嬉しかっただろう。
会社に入ったばかりで、何もわからない。
だけど青木先輩だけが、親切に教えてくれた。
車で送ってくれまでした。
そこには、ほのかな恋心も芽生えていたかもしれない。
しかし青木先輩は、実家の和菓子屋を継がなければならない。
田舎の和菓子屋に嫁ぐ覚悟まではない。
さようなら青木先輩。
先輩と一緒にいたとき、私はとても嬉しかったです。
まぁ、“私”も青木先輩も、男なのか女なのかわからないが。
しかし、その子の答えを見たとき
なんともない文章から、色々な物語が広がったのは事実。
なんだか、とても素敵な答えだと思った。
罰にするなんて、とても忍びない。
なので、三角にして
一点マイナスにした。
テストを返すときに、その子には
「本当は私、この答え、とてもいいと思います。
でも文章に書いてないので、一点だけ、すみません。」
と断りを入れた。
その子は、少し恥ずかしそうに「ありがとう」と言った。
こんな簡単な文章でも、色々な回答が出てくるのだから
国語教師になんてなった日には
毎日、頭を抱えてしまいそうです。
採点に時間がかかりすぎる私。
余計なことを考える癖を、どうにかした方がいい気がしてきました。
とりあえず私には
素敵な青木先輩像が見えます。