僕には、学生時代からの10人の仲間がいます。
そのうち二人は、すでに亡くなりました。
一人は、2019年にがんで。
もう一人は昨年末に、おそらくアルコールによる心不全で。
3月頭に、残った8名のうちの4名が集まって飲みました。
いつものようにくだらない話をして、美味しいものを食べ、気持ちよく酔いました。
その日の帰り際の光景が、ずっと心にあります。
店は、渋谷の宮益坂を上がった裏手にある、中華居酒屋みたいなところでした。
帰り道は、僕が渋谷駅に向かい、他の3名は表参道駅に向かうと言いました。
店の前で、「じゃあ、またな」と言って彼らに背を向け、僕は歩き始めました。
すると背中越しに、「おい、死ぬなよ」と大きな声がしました。
彼は酔っぱらっているのです。
僕は立ち止まり、振り返って笑いながら、「おう。じゃあな」と手を上げて応えました。
そんな彼の言葉は、不思議と心地よい響きで僕に伝わりました。
普通は、人に「死ぬなよ」なんて口に出して言わないよなぁ、、なんて思いながら、僕は口元をほころばせていました。
それに、遅かれ早かれ全員死ぬんだぜ、と思いながら。
彼とは、中学高校大学と一緒で、もうずいぶん長いつきあいになります。
たしか、中学の入学式の日に、初めて入った教室で、僕の後ろの席に座っていたのが彼でした。
それ以来、部活が一緒だったわけでもないのですが、付かず離れずのちょうどよい関係が続いているのでしょう。
互いに関わりすぎず、利害もなんにもないのが、楽ちんでいいのです。
まぁ、僕がまたがんの検査をいろいろ受けねばならないなどと話したから、少しは心配して言ったのかもしれません。
まもなく、2019年に亡くなったやつの命日がやってくるので、きっと誰かが集まろうと言い出すと思います。
以前、仲間の一人が「一番先に死ぬのは恐いけど、最後に一人だけ残るのは、もっといやだなぁ、、」と言いました。
ちなみに、彼には大学生の娘が二人います(笑)
「いい歳して子どもか、おまえは」と言って、僕らは笑いました。
そして、「もう1番と2番はうまっちゃったから、3番から9番を狙え」と諭しました。
その日、僕らが行きついた結論は、これです。
「今日を楽しめ」