(サーラ)


今年の6月のブログで、アルコール依存症らしい友人について少し触れさせていただきました。

このままだとマジでやばいんじゃないか?と心配していたのですが、先週の金曜日の朝、その友人が本当に死んでしまいました。



もともと僕らは中高大と一緒の同級生で、10人でグループLINEを作っている飲み仲間でした。

そのうちの一人がガンになり、2019年の夏に亡くなりました。

その後は、亡くなった友を偲び、年に2回ほど皆で集まっていました。

昨年くらいから、今回亡くなってしまった彼が、やたらと頻繁に飲み会をやりたがるようになりました。

彼の実家は、祖父の代から続く中小企業を経営しており、彼の兄貴が社長で、彼は専務をしていました。

ところが、昨年、様々な事情から会社を売却することになり、一番大きな取引先でもある企業に会社を買い取ってもらうことになったのです。

おそらく、それが彼の中ではいろいろな意味でこたえていたようです。

もともと酒好きではあるのですが、次第にエスカレートしていったように思われます。

あいつは、他人に使われたことが一度もなかったからなぁ、、

ずっと、そんなことを思っていました。




彼に子どもはおらず、大きな家に奥さんと二人で住んでいました。

先週木曜日の夜も、いつものように酒を飲み、リビングで寝てしまったそうですが、そうなると言うことを聞かず、暖房もしっかり効いているので、いつものとおり毛布を掛けてあげて、奥さんは休んだそうです。

夜中に何度か様子を見た際には、特に変化もなかったそうですが、朝になって見たら洗面所の辺りでうつ伏せに倒れていたとのこと。

奥さんがみつけたときには意識があり、「大丈夫だ」と応えたそうなのですが、そのまま起き上がることができずに意識を失ったと。

救急隊が駆けつけ、蘇生措置をしながら救急病院に運んだのですが、戻って来なかったそうです。

彼の奥さんも気の毒で、病院で死亡が確認されたあと、彼が倒れていた時の状況から「不自然死」と判断され、遺体は東京都監察医務院に送られて検死されることになってしまいました。

消防から警察に連絡が行き、自宅に近隣の警察署から刑事が乗り込んできて、半ば取り調べのようなことを訊かれ、預金通帳を見せろとまで言われたそうです。




日曜の夜、東京都監察医務院での解剖を終えてやっと戻ってきた彼に会うため、彼の家まで行ってきました。

死因は、まだ特定されていないとのことでしたが、「病死」とは認定され、今も採取した細胞等を調べている最中とのことでした。

彼の家の車庫には、彼のVOLVOと奥さんのミニクーパーが並んで停まっていました。

彼は死んでしまったのに、愛車はいつもと変わらずにたたずんでいました。

VOLVOの車内には、イモビライザーという盗難防止システムの作動を示す小さなランプがあり、夜の闇の中で赤い光を放って点滅していました。

おまえの持ち主は死んでしまったのに、おまえはまるで生きているみたいだな、、、

そう感じました。

リビングで棺に入って横たわっている彼は、ただ眠っているようです。

彼の奥さんには、友だち連中が皆ついているから心配しないように、と伝えました。

「いろいろあったんだろうが、好きな酒を好きなだけ飲んで、好きなように逝ってしまったんだから、幸せな男だよ」

「おれは去年ガンになったから、先に死ぬのは自分だと思っていたのに、いったいどうなっているのかなぁ、、」

そんな話をしました。

そして、彼と彼の奥さんとの楽しかった思い出について、たくさん話しました。




彼の兄貴が、銀行の貸金庫に保管されていたというWord の書面を持ってきたくれたと言って、それを見せてくれました。

そこには、いつか自分が死んだ際の葬儀に関する彼の要望が書かれていて、直筆の署名と実印が押してありました。

•葬儀は不要であること。
•読経、戒名、墓は不要であること。
•どうしても告別式が必要な場合は、無宗教としてほしいこと。
•骨は、海に散骨してほしいこと。
•散骨は、妻と、亡き愛犬と、亡き愛猫と、一緒にしてほしいこと(愛犬と愛猫の骨は寝室にある)

彼と彼の奥さんは、犬と猫がとても好きで、かつて両方と暮らしていました。

しかし、先に猫が、のちに大型犬が死んでしまった時、その悲しみがあまりに大きすぎて、それから15年以上も動物とは暮らしていませんでした。

そうか、、、

おまえは、本当はもう一度、犬と暮らしていればよかったんだよ、、、

どんなに二日酔いでも、どんなに飲みたくても、愛犬の散歩に行かなきゃならなかったとすれば、こんなにも酒に溺れたりしなかったんじゃないのか?

愛犬がそばにいれば、今のおれのように、先に死んでしまうわけにはいかなかったんじゃないのか?

かつての彼の愛犬も、愛猫も、僕はよく知っていました。

「◯◯と□□には、もう会えたか?これから会うのか?」

眠っている彼は何も答えませんでしたが、少し笑ったような気がしました。





明日、彼が望んではいなかった、彼の告別式に行ってきます。

そして、最後に骨を拾わせてもらおうと思っているのです。