僕が若かりしころ、ある時期、一緒に寮生活していた1歳上の先輩がいる。
この人が、よく昔のアニメ、海底少年マリンというアニメの主題歌を口ずさんでいた。
それを、いまでもよく思い出す。
「オッケー、オッケー、七つの海は~
僕がひとりで引き受けた~」
最近、この歌を口ずさんでいる自分に気付くことが、よくあるのだ。
彼は、兵庫県の明石出身だった。
彼とは、もう30年ほども会っていない。
今となっては、連絡先もわからない。
そして、もうおそらく生涯会うことはないだろうと思っている。
人づてに聞いた話なのだが、だいぶ前に彼は自ら命を絶ってしまったというのだ。
僕は、今でもそれを信じることができない。
彼がそういう人間であったとは、どうしても思えないからだ。
ある大企業に勤務し、中国の支社長かなにかで中国に行き、何かがうまく行かず精神を病んで帰国した。
そうしたら、日本にはもう自らの席がなかったらしい。
だが、それが真実かどうかもわからない。
最近、学生時代の同級生たちと一緒に酒を飲んだとブログに書いた。
実は、その中の一人が、彼と同じ企業にいる。
だから、彼の名前を出して尋ねれば、ある程度のことはわかると思っている。
だが、それを尋ねたことはない。
ひとつには、飲み会の席には他の同級生たちもいて、そいつらは彼を知らないからだ。
そして、もうひとつは、僕が本当のことを知りたくないと思っているからかもしれない。
僕は、彼を割りきりのいい、強い人間だと思っていた。
弱さなど感じたこともない。
僕と彼はタイプが違ったので、逆に僕らはうまがあった。
どっちがいい音の屁をこけるか?なんてことをして、バカ笑いしていた。
僕は、バイクやクルマや音楽の話ばかりしていた。
よく、「おまえは気楽でええなぁ。おまえは気楽マンやなぁ」と言われた。
ある意味ではその通りであったし、ある意味ではそうではなかった。
だが、気楽マンと言われることは、僕にとって気楽なことであり、救いでもあった。
ある日、もう彼がこの世界からいなくなったと聞いた後のことだ。
僕は、Facebookで彼と同姓同名のアカウントを見つけた。
イタリアの少し古いアルファロメオというクルマの写真が載っていた。
もし彼であるならば、彼らしくなかった。
少し古いイタリアのクルマなんて、僕は大好きだったが、彼は好きではなかった。
カッコいいが、すぐ壊れるクルマ。
エンジン音はいいが、たいして速くないクルマ。
人違いか、彼が変わったのか。
なんだかよくわからないが、僕はいたたまれないような気持ちになって、パソコンの電源をすぐに落とした。
「会社なんて、命や人生に比べれば屁みたいなもんだ。どうでもよかったんだよ」
たしか、、
そんなことを空に伝えたように思う。



