皆さま、こんばんは。
いつもフーラとサーラを応援いただき、ありがとうございます。
いただいた「いいね」にお返事できておらず、すみません。
この度のパパの入院、手術、退院につきまして、本当にたくさんの応援をいただき、感謝しております。
今日は、パパが入院中に出会った印象的な人について書きたいと思います。
手術後の病床で、痛みに耐えながら横たわっていた時、同室の印象的な人についてニヤリとしながらメモったりすることで、ずいぶんと気をまぎらわせることができました。
その中の筆頭は、この人。
一番いい味を出していて、僕が好きだったおじいさん、
かつまた たかしさん(仮名)
かつまたさんは、僕が手術した次の日に4人部屋に入院してきて、僕より二日早く退院していかれたおじいさんです。
正味5日間ほどの入院をされたのだと思います。
診療科は僕と違っていて、腎不全の人口透析を行うため?に、手の血管の手術を受けに来ていたようです。
看護士さんから「腎不全、人工透析のため、シャント、手の手術」というフレーズが出ていました。
手術後には、「かつまたさん、手術終わりましたから、今後は右手では一切、採血、点滴、注射等できませんからね」と説明されていました。
この人、僕にとって、愛すべきおじいさんでしたね。
これから書くのは、かつまたさんの独り言です。
この人、ずっとしゃべっています。
なので、とてもうるさいです。
でも、全然頭にこないから不思議だったなぁ。
まず、初日に部屋に入るなり、デッカイ屁を「ブッ」「ブリッ」「ブブブブブッ」と連発してこきました。
でも、これ、自分も平気でおならができるようになるので、実はとてもありがたかったのです。
そして、こんなことを、ずっと独り語りしていました。
※My name is タカシ カツマァターァ~
※ホワッチャネーム?
自己紹介してるのか?こちらにも訊いてるのか?答えるべき?と悩むけど、同部屋の誰も答えません。実際は答えて欲しくて言っているのではなかったようです。
※I love you.
※You love me.
※So good.
※ああ、もうだめかもな。
※いま、何時?
これ、1日50回くらい言います。1回、パパが壁越しに時刻を答えたら黙ってしまいました。空振り感、半端なかったです。
で、次から、
※いま、何時? 9時50分。
と、自分で答えるようになりました。
※ああ、腹へったな
食後、10分たつと必ずこれを言います。そして、1日50回くらい言います。
※メシ、まだか?
※ああ、腹減っちゃったな。
朝の血糖値検査で低血糖と言われて砂糖水を2回ほど飲まされていたので、満腹感が少ないのかも?
でも、逆に朝の血糖値が高いときもあり、その場合はインスリンを打たれていたので、糖尿病と腎不全の両方をお持ちで、その影響で血糖値が乱高下したりするのかもしれないなどと想像していました。
いま何時?→ああ腹へった→メシまだか?の無限ループは、永遠なり。
※昭和15年1月2日生まれ。
※東京都大田区中央○-○-○
たぶん出生地、パパもよく知った地元エリアだし番地まで覚えちゃったけど、書けない。
※入新井第2小、大森3中、大森高校、霞ヶ浦航空隊(学歴、自衛隊?)
※神奈川県川崎市高津区□□町○-○-○
たぶん現住所、書けません。
(親兄弟と思われる方の名前を連呼)
※父じゅうきち、母しょうこ、ちえこ、自分、ともこ、れいこ、□□、△△、
(しんみりとして)
※ちえこさん!
このお名前、かなりの回数言ってました。このときだけしんみりと言うので、最初、亡くなった奥さまか?結ばれなかった恋人か?などと想像しましたが、結局のところお姉さんではないかと推察しました。
※すみ子~。あれは失敗だったな。本当にすんじゃったもんな。(意味は不明)
そのような中で勃発したのが、セブンイレブン事件。
退院予定日を3日後に控えた1月16日(日)の朝、パパが看護士さんに「院内のセブンイレブンで、病院食以外にヨーグルトとか買って食べたらダメ?」と訊いたら、「加藤さんは、退院まで病院食だけにしておいてくださいね」と言われました。
それを聞いていたミスターカツマァタ~が、すかさず「この中にセブンイレブンあんの?行っていい?」と、病室を出がけの看護士さんに訊きます。
看護士さんも、毎朝のように低血糖で砂糖水を飲んでいることからか、「かつまたさんは、いいですよ」と答えました。
ベッドをしきる家具越しに伝わるミスター カツマァタ~の「ウッホーイ、ヤッター!」の気配。
しばらくすると、「セブンイレブン行くぞ」の声が。
もちろん、誰も応えません。
それを繰り返すこと約30分、10回ほど。
ついに、「よし、セブンイレブン行くぞ」と満を持して病室を飛び出すミスター。
まず、入院棟6階フロアからセブンイレブンのある地下フロアへ行くための、エレベーターホールへ出ねばなりません。
患者は、手首に巻いた識別票を、フロア出入口の自動ドアのバーコードリーダーで読み取らせるとエレベーターホールへと出られるのです。
戻って来るときも、エレベーターホールの自動ドアで識別票を読み取らせないと、入院棟フロアには入れない仕組みになっています。
5分くらいして、「ミスター、そろそろセブンイレブン着いたかな?」なんて思っていたら、戻ってきたミスターの声が。
「いけねぇ、いけねぇ、ここ何号室だっけ?ん?602か。よし!」
再び、病室を飛び出していくミスター。
「ミスター、今まで5分間なにやってたの?(パパの心の声)」
それからさらに、5分。
またまたミスターの声が。
「いけねぇ、いけねぇ、マスク、マスク。あぶねぇところだった。ふー、あぶねぇ。よし!」
それから、かれこれ40分ほどもミスターは帰って来ません。
ちょっと心配しはじめていたら、病室の前で看護士さんと話すミスターの声が。
「おう、ありがとう。おかげで助かったわ」
ミスター、途中で道にでも迷ったのか、看護士さんに案内してもらって帰ってきたのかもしれません。
「ふー」とくつろぎながら、ベッドでペットボトルの蓋を開ける音が。
「あー、うめえ。やっぱり小岩井りんごジュースは、甘くてうめえなぁ」
ん?
小岩井りんごジュースって、このフロアの対角線の位置にある自動販売機で売ってるやつじゃん。
どうやら、気配から戦利品はそれだけの様子です。
まさかミスター、このフロアを出てなかったの?
今まで40分間、なにやってたん?
そのあと、ミスターの口から「セブンイレブン」というフレーズが発せられることは、二度とありませんでした。
が、しか~し、
さすがは我らがミスターです。
期待を裏切りません。
昼ごはんが終わって少しすると、叫んだのです。
「そうだ!売店行くか?」
売店?
ついにミスターの中で、セブンイレブンは「売店」へと進化を遂げたのです。
さすがに、このあと「売店」という言葉を20回くらい口にしておられましたが、実際に売店へと突撃されることはありませんでした。
こんな感じのおじさん、昔はそこら辺にいっぱいいたよなぁ、、なんて、
懐かしく思ったりして。
かつまたさん、退院の日にもいい味を出していたなぁ。
退院前日の夕方、看護士さんとかつまたさん、こんな会話をしていました。
「かつまたさん、退院、明日に決まったよ。よかったね。誰か迎えに来れるの?」
「妹が来る」
「あ、そう。じゃあね、私から妹さんに連絡して、明日の退院とお迎えの時間のこと伝えていい?それとも、自分で連絡する?」
「自分で連絡するから大丈夫」
「本当?無理しなくてもいいんだよ。私がやるよ。本当にいいの?」
「本当にいい」
大丈夫かいな?
これは、パパの心の声。
で、翌朝8時の朝食のあと、かつまたさん、「食ったぁ~。さぁてと、ひとねむりするか?」なんて独り言を言っています。
いやいや、寝ている場合ではないでしょう。
あなたは、午前10過ぎに退院ですよ。
これも、パパの心の声。
そのあと、パパが点滴棒を押しながらトイレに行って帰ってきたら、かつまたさんのベッドのあたりに看護士さんが何人かいて、ちょっとした騒動になっていました。
「かつまたさん、このあと退院でしょ?寝ている場合じゃないよ。それとね、かつまたさん、きのう妹さんに連絡してないでしょ?さっき妹さんに確認の連絡をさせてもらったの。そうしたら、妹さん、なにも聞いてないって言ってたよ。だからね、お迎え12時まで来れないって。ね、次の患者さんが、今日のお昼にここに入るからね。早く荷物片づけて、10時から12時までは談話室でね、妹さんが来るまで待っててもらうからね」
そのあと、かつまたさん、必死になって荷物の片づけをしておられました。
この5日間で、かつまたさんのこんなに気合いの入ったするどい気配を感じたのは初めてのことです。
「ふぅ~」
かつまたさんが安堵のため息をつくころ、看護士さんたちがやって来ました。
「かつまたさん、準備できたね。じゃあ行くよ」
パパは、カーテンを少し開けて、退院していくかつまたさんをそっと見送りました。
「かつまたさん、元気でね。おれも退院できるようにがんばるから。もう病院ですれ違っても互いにわからんと思うけど、あなたのことは決して忘れないよ。長生きしてね」
そう、心でつぶやきました。
部屋を出ていくかつまたさんは、両脇を看護士さんに抱えられていました。
さながら人類に取っ捕まった小柄な宇宙人のような哀愁を漂わせながら、かつまたさんは談話室の方向へと消えていきました。



