日曜日の朝、いつもの散歩道をサーラと歩いていた。

すると、歩道の7~80 メートルくらい先から、こちらに向かって歩いてくる男性の姿が見えた。

おそらく、犬を飼っている人ならわかるはずだが、散歩中に正面から人が来ると、どういう人か反射的に観察する。

犬を連れているか?

犬を連れているなら、一匹か二匹か?

大型犬か、小型犬か?

そして、男性か女性か?

一人か二人か?子供連れか?

自転車か?

何のことはない。

すれ違う際に、お互いに嫌な思いをせずにいられるか、確認しているのだ。

だから、人だけの場合は、こちらが歩道の端に寄ったり、時には反対側の歩道に渡ったり、犬連れの場合はサーラと嫌がらずに遊んでくれそうかを探ったりしながら、近づいていく。

日曜日の朝、わが家の周りのお散歩コースに、人影はほとんどない。

そのような中、向こうから、男性が歩いてくるのが見えた。

男性は何かを押してゆっくり歩いているようだった。

最初は台車か?と思ったが、近づいてみたら、ワンコ用のバギーであった。

3メートルの距離まで来て、挨拶を交わした。

初めてお会いする70歳くらいと思われる男性だった。

バギーには、シーズーがおとなしくおすわりして、前を向いて乗っていた。

僕は、「もうお年なのですか」と聞いた。

すると、「ええ、もう14歳なのですが、リンパ腫なんですよ」とお父さんが言った。

「もう余命いくばくもないと思います。よく正月を迎えることができたなぁという感じなんですよ」

そして、「だから、少しでも想い出をつくりたくてね」と言って微笑んだ。

目を細めて、穏やかな、優しい表情だった。

「もう、このあたりが腫れてしまってね」と話されたので、「そうなんですね。でも、全然そんな風に見えないです」と伝えた。

僕は、18歳のフーラを、昨年、腎不全で亡くしたことを話した。

「犬を亡くすのは、さみしいですね。まだ、これからだけど」と言って、お父さんはフッと笑った。

僕はシーズーさんに、「まだまだ、がんばろうね」と声をかけた。

お父さんは会釈を返してくれ、僕らは別れた。

少し歩いて振り返ると、お父さんはゆっくりとバギーを押しながら歩いていた。

その背中には、幸せと悲しみの両方が宿っていた。