ロスバンドとはルース(緩い)なバンドのこと。
そのバンドメンバー4人が一台のキャンピングカーに乗って、全国ロック大会への出場に向かう珍道中だ。ノルウェー発のロードムービーと言っていい。
ノルウェーは何と言ってもフィヨルドの国、スカンディナヴィア半島の西岸に位置し、海に向かう川が氷河により削られてU字谷を形成する。そこに海水が流入するのだ。
陸地のほとんどをスカンディナヴィア山脈が占め、そこに降り積もった雪は氷河となる。
氷河は解けて清冽な流れとなり、瀑布となって墜ちる。そこがフィヨルド。
水面は穏やかだが、水深は深く澱んでいる。春、渡る風は冷たかった。
ノルウェーの瀑布は半端じゃない。水量も規模も日光華厳の滝の比ではない。しかも至る所に墜ちる。だから大概が無名だ。
大会会場はノルウェー北部のトロムソ、北極圏に位置する。オーロラの観光地でもある。
南端のオスロ近郊から、北端にあるトロムソをめざすのだ。それを風景がパノラマのように追いかける。美しさに息をのむ。
4人はそれぞれに問題を抱えている者たちだが、旅を通じて、道中の悲喜こもごもに友情と固い絆を結ぶことになる。
主人公はドラムの高校生グリム、両親の不仲に心を痛める優しいナイスガイだ。
幼馴染みのアクセルはギター兼ボーカル、音痴なのだがグリムはそれを言い出せない。
そこに級友からも家庭からも疎外される、わずか9歳の少女ティルダ、ベース。
そして、道中次々と降りかかる難題をブレークスルーする影の主役、ドライバーのマッティン、アクセルに代わってボーカルをやることになる。
いや影の主役はティルダかも知れない。
日頃はクラッシックのチェロに励むが、絶対音階の持ち主でもあるのだろう、即興的にロックのリズムに乗ることもできる。
まあ並みじゃない不思議な子だ。
ノルウェーには妖精が住むという。ムーミンもその仲間。
少女はその妖精のような瞳を持つ。いや皆が主役の妖精たちでもあるが。
それが証拠に、ティルダが誘拐されたとの嫌疑により、皆は追われる身となるが、最後はパトカーとのカーチェイスの果てに、崩落により通行止めとなった橋をひとっ飛びして、警察を振り切って逃げ切ったのだから。
あの寸胴のキャンピングカーが空を飛ぶなんて。
大会では優勝こそ逃したが、拍手喝采を浴びた。そして次なる目的地はアエラクと決まっている。
それはティルダの心の拠り所、今はゴーストタウンとなった、おそらく生まれた町だ。
そうと決まれば出発だ。皆は上機嫌に声を限りに歌え!