旧新日鉄のマンドリンクラブだ。創部70年と言うから古い。
2018年に市民合奏団として再出発というが、中味は新日鐵住金のマンクラだ。
団員も多いが、年配も多い。そして渋い。フェッロとはイタリア語で鉄のこと。
一度聴いた覚えがあるぞ。その後コロナ禍で、なりを潜めていたようだ。
今日は久しぶりにステージ一杯に、思いの丈を響かせるのだろう。
と言うことで、演目は多いが、曲からイメージした情景をランダムにコメントしたい。
ラヴィラーノ「レナータ」
宗教戦争の渦中にあって、信仰を貫いた仏王女の物語。
重い曲調に始まり、軽快に、そしてささやくようなスローなテンポに変わる。
遠慮がちだった音が、何かの弾みに調子を得て、自由に伸びやかに旋律を奏でる。
アマディ「セレナーデ風ガボット」
アマディは伊軍楽隊指揮者、管弦楽曲も手がける。
草原を渡る風のように軽快で爽やか。どこまでも放埒に曲は流れる。軍楽隊として戦意を鼓舞する隠し味があるのだろう。
ヴェルディ「歌劇アイーダより凱旋行進曲」
イタリアを代表する歌劇「椿姫」のヴェルディだ。
対エチオピア戦に勝利したエジプト軍の凱旋歌だが、ポピュラーでメジャーな曲だ。
トランペットのファンファーレが凱旋の高揚を高める。勝利の雄叫びだ。
そして堂々の行進が隊列を成して進む。兵士も市民も歓喜に一体となる。
映画「黒いオルフェ」のテーマ曲
これもメジャーな曲だ。哀愁のメロディ、どこまでも悲しく、旋律は美しい。
ビゼー「真珠採りの歌」
ビゼーの代表曲でもある。クラッシックと言うよりもポピュラーな楽曲だ。
どこか日本風で、哀愁を帯びた、マンドリンのトレモロが一層の哀調を奏でる。
これをカンツォーネで歌えばドンファンの舞台となる。
武藤理恵「華・Japanesque」
武藤はピアニストにして、マンドリン曲の作曲家でもある。
女性特有の嫋やかさに包まれ、春風駘蕩、遙かな大地、遠い空、風を切って走る馬の群れ、馬はいななき、馬は疾駆する。
末廣健児「流星群」
末廣はマンドリンの中でも特大のマンドロンチェロの奏者、作曲家でもある。
仰げば天穹に星々は輝き、時折、一瞬のしじまを破る矢のような流星群、そして星座も巡る光の渦。
永遠などない。星々にも、見上げる者たちにも。
命に限りがあるのなら、せめてこの一瞬の光芒に願いをこめて。
宇宙旅行のように、ステージは音と光に包まれて、華々しく神々しく終わる。
勝手な空想である。その勝手なイメージをつむぎながら、音の恍惚にふける贅沢な時間もある。
音に癒やされつつ齢を重ねる者は幸せである。