国境線を越えての逃避行のように、定年ラインを何とかやっと越えて夢の「年金生活の国」に逃げ込むように転がり込んだのは私だけでないはずです。そこは密かに頭を低くしておとなしく過ごしていれば、ささやかですが夫婦で年に1~2回くらいの小旅行や、そんなに金のかからない趣味なら、週に1回程度は楽しめる生活が待っているはずでした。
そんな甘い考えが吹っ飛んでしまい、悩み苦しむ毎日を送らざるを得なくなった私は、落ち着いて考えることを自分に言い聞かせながら、自分が今できることの「棚卸し」をやってみました。
その結果、「やっていて苦痛を感じない、又は楽しいもの」と考えた時、たった2つしか思いつきませんでした。本当に他にはなかったのです。それは「野菜つくり」と「パソコン」でした。

この中で「パソコン」は、会社勤めをしていた50歳になった頃、ある日突然会社が事務や営業関係の社員全員にひとり1台のIBMのノートパソコンを配布しました。配布された者は全員パソコンを習得することが義務付けられ、本社で週3回ほどパソコンの講習会をはじめました。仕事が終わってから講習会に参加させられ、その時は確か、インターネットとメールとワードとエクセルを2ヵ月で全員マスターするよう、社長命令がでました。遅れると怒られるのでみんな必死に勉強していました。
この時のおかげで、私は定年後もインターネットやメール等は人に聞かないでも出来るようになっていました。

ある夕方、近くにできた大衆浴場の露天風呂につかりながら、”「野菜つくり」と「パソコン」だけか、これでは年金以外に他から収入を得ることはできないなぁ”ボケーッとして天を仰ぎながら”何かないかなぁ、できれば10万円くらい入れば良いんだがなぁ”と考えていました。
その時、フッと昔のことが頭をよぎりました。それはある日、会社で同僚のパソコンが故障して、どうしてもインターネットにつながらなくなったため、専門業者に来てもらった時の話です。業者が忙しくて予定に日に来られず、1日遅れて修理に来た時のことです。

業者は「遅れてしまってスミマセン、スミマセン」と頭を下げまくって謝るのです、しかし同僚は別にそんなに謝ってもらわなくても、インタネット急いで今やってることもないので「いいですよ、1日や2日くらい遅れたって何も差し障りはないのですから・・」と言った時、その業者の人は「本当に申し訳ありません。これが個人でインターネットでお金を稼いでいる人だったら、大変なことになっていました・・・。」と言ったのです。
風呂につかりながら、その時の場面とその言葉が思い出されたのです。・・・(続く)