素人の洞察にも、時折鋭いものがあることが稀ではない。ほとんどの場合は専門家の言うことが正しいし、素人の洞察にしても、本人の意図せぬ箇所でテレビや雑誌などで知った専門家の受け売りだったりすることが多い。しかし曲がりなりにもこの大学全入時代、blogを書く人間もおそらくは半数以上が高卒以上であり、それなりの教養も持っている。もちろん中にはそれぞれの分野の専門家だっている。そうしたなかでblogの「横の繋がり」が情報の多面的分析や集約を生み、時として専門家(この場合は例えばマスコミ)の仕事に匹敵するぐらいのことをしでかす事もありうる。まあ、そんなことが度々あるようでは、専門家は何をやっているのだと説教しなければならないのであるが。


 件のblog のコメント にしたって、支離滅裂な中にも筋の通った部分がないわけではない。


--引用--
ネットは新しいだけにルールやマナーが確立していない。それだけに行き違いがおこりがちだ。それぞれが自分のルールで勝手にやっている。自分の主張だけが正しいと言い立てる。

車との付き合いに慣れたためだろうか、近頃だいぶ運転マナーは向上した。酷い運転をしたほうが恥ずかしいという常識ができた。ネットのほうはまだまだだ。匿名性もあって、旅の恥は掻き捨てー状態となっている。
--引用終--


 この文は、blog炎上への対処の仕方も知らない素人bloggerにしては、なかなか鋭い指摘であると言えよう。惜しむらくは、この文章が当てはまるのが、彼が批難しようとしているコメント人ではなく自分自身の態度であるという点だが。


 そのど素人さんは、常習的にあちこちに自blogのSPAMを振りまいているらしい。 氏の田中康男批判には相変わらず目を通していないが(元から田中康男は嫌いだし、都民だから長野の事などどうでもいい。)、他人のblogが一次資料に当たっていないとか言って批判しているのだから、それなりの自信の出来映えのだろう。(先日たまたま目にした長野県知事記者会見のサイトを見た限りでは「こりゃあ田中康男もスルーするだろう」と苦笑させられたが。)
 それは良いとしても、全然関係のない話題に自分のTBや、自説を開陳するだけでエントリーとは無関係のコメントをつけることは、どう客観的に見てスパムである。このチ的野次馬は、週刊オブイェクトの編集子にスパム呼ばわりされたことが余程気に障ったのか、さらに別の話題のコメント欄 に


--引用--
スパムって何のことかな?内輪だけでしか通用しない言葉を得意になって使うのはカルトだ。
たかがトラックバックぐらいで二度もこんなことを書き込むあなたは珍しい。関係ないトラックバックなんてしょっちゅうある。私はいちいち文句を言いに行ったりしませんがね。
そんなにいやなら出来ないようにしておくか、ネットなんて使わないことだ
--引用終--


 などと英語まじりのわけのわからない供述を加えている。内輪でない人が見てもスパムです。自称記者にしてこの非常識ぶり。驚愕だね。ネット用語の非常識に加えて、自サイトの宣伝をピンクビラのように無闇にあちこちに貼り付ける行為を、迷惑行為と認識していない点にも驚く。記者ってのはこんなにも非常識でやっていけるものなんだろうか。件の炎上記事の「勝利宣言」では「私は紙の代わりにネットを使っているだけだ。世間の常識に則ってやっている。ネットのおかしな慣行は無視するのが適当だ」などと書いているが、町内会の告知板にピンクビラを貼り付けて、町内会と関係ないだろうと注意されたら「そんなにいやなら出来ないようにしておくか、告知板なんて使わないことだ」などと宣うような者がどう「世間の常識に則って」いるというのか。都合のいいときは「世間の常識に則って」と言いつのり、都合の悪いときは「常識への反駁」などと宣う。いい年して恥ずべき人だねえ。


     *


 消火作業を終えて、この「チ的野次馬」の痴的たる所以をまとめておこうと思う。tuigeki氏に於かれましては、反論できるならして下さっても構いませんのことよ。TBもコメントも拒否したチラシの裏のようなご自分の日記サイトに書いてくださっても。弊社の目に触れないメールマガジンに書き散らすのが関の山だと踏んでますがね。


・「救助隊員が携帯電話に出ない理由が分からない」と書いているが、元記事のすぐ下に「助けを求める人を探して奥へ奥へと進んだ」と記してある点について。このチ的野次馬は、「助けを求める人を探」すことより電話に出ることの方が大切だと言うのだろうか。それともすぐ下にあったこの一文を見落としたのだろうか。元記者のくせに新聞も満足に読めないのか。


・反論が多くついたことに関し、自分の文章が「こういう意見が多くなっていることへの憂慮」だと述べているが、救急隊員が人事不省の怪我人を前に、救助以外のことをして賞賛される時代なんていつあったのか。言い訳するにしてもみっともなすぎ。まるで汚職がバレた政治家みたいだ。


・「電話に出るぐらい簡単だ。なんの救助の妨げにもならない。すぐ救助できる状況になかったのだから」の根拠がおそらく脳内取材にすぎない点について。これも元記事のすぐ下に「2両目からは5人を運び出した」「携帯の音にせかされるように早く外に出してあげたいと思った。」と書いてあるのだが。元記者のくせに妄想ででっち上げですかそうですか。


・「記事に非難の色合いがないのもおかしい。」と、読売新聞が救助隊員を批難しないことを批難しておきながら、後出しのコメントでは「この問題についての対処の仕方は二通りあって、どっちにも言い分は立つ。それをどっちがいいのと、ここで言い合ってみても始まらない。」などと自己否定している件について。どっちにも言い分は立つんだったら、そもそもtuigeki氏の言い種が「始まらない」ではないか。立場が苦しくなって後付で立場を拵えることを、論理の展開とは言いません。


・「私がものを書く動機は常識や通念への反駁だ」としておきながら、自分に批判的なコメントの全削除を「世間の常識に則ってやっている」などと急に常識ぶる点について。どっちやねんと。だいたいコメントした人達だって、「公務員叩きなら妄想でも構わん」などというマスコミ人の通俗、記者の思い上がりへの反駁ではないのかね。自分の反駁は正しく、自分への反駁は非常識だとでも言いたいのだろうか。


・「ネットのおかしな慣行は無視するのが適当だ。これらは世間知らずのネットお宅のようなものたちがつくったものだからだ。」と書いているが、「常識や通念への反駁」とやらは、体制の作った「おかしな慣行」への叛逆ではないのかね。反駁だの常識に則るだのと気取った言い回しをしているものの、結局は「俺は正しくてお前右翼」と歌っているようにしか見えないのだが。
 だいたいどこの世間通が「救急隊員は救命現場で携帯電話の応対をしなくてけしからん」など宣ったり、スパムを撒き散らかして注意されて逆ギレするというのか。世間知らずの痴的野次馬が何様のつもりか。


・自分への批判的なコメントを全削除するという態度は、あたかも独裁国家の絶対君主のような態度であり、カリスマのない現代に於いてその父性は頼もしくさえ感じられるが、それなりにまとまった分量・内容のトラックバックまで消すのは如何なものだろう。拙エントリに関しては、「別冊宝島」あたりの「ブログ炎上!」とか題したムックのネタ元ぐらいだったら末席を汚してもおかしくない程度の「批判エンターテイメント」に仕上がったと自認するものですがね。
 そんなにご自分の世間知やご高見に自信がおありなら、かつてのコネでも何でも使ってblogの内容を記事にして世間様に晒してみてはどうか。公務員叩きなら「週刊金曜日」あたりなら喜んで載せてくれるのではあるまいか。


・救急隊員の話ではないが、昨今で最もマスコミ人の通念の異常性を感じた文。

--引用--
死亡者を「匿名の男性何歳ー」といった報道のしかたをしているテレビ番組があった。家族の希望だという。そのうち全部が匿名になったらどうなるのだろう。事故の痕跡や問題性も薄まってしまわないか。
プライバシーより命のほうが大事ではないのか。不慮の死をとげたときぐらい、顔写真や名前を出したほうがよくはないだろうか。
--引用終--

 自分で「『顔写真がないと格好が付かないからさ』といったほうがピンとくる。」と認識しておきながら、すぐ下に上記のような自己弁明を書けることに驚く。元記者のくせに文章を推敲するということをしないのかね。遺族が匿名を希望しているのにそれに反して実名を出すことが、どう世の中を良くするというのだろう。「革命に犠牲は付きもの」だとでも言うつもりか。「あまり説得力はない」と自認しておきながら。
 全部が匿名になったらどうなるのだろう。マスコミがセンセーショナルな報道をできないだけである。それで困るのはワイドショーと週刊誌と赤新聞だけだろう。あとは善人ぶっておきながら人の不幸への興味が止まない我々読者である。
 他人の不幸を喜ぶ下種な大衆に売るためにマスコミ人はガン首写真を集めているのだ、と言うなら否定しませんよ。それは企業努力ですから。そのことに対する後ろめたさが、斯様に支離滅裂な弁明へとつながっているのではなかろうか。


 とまあ、どうにも見る限り、知的作業や論理展開の苦手そうな人ではある。念のために記しておくが、常識に背馳しているからとか、公務員を非難しているからなどといった理由で論難しているわけではないぜ。常識に背馳してようとも、時として遺族の心の傷に塩を塗り込んでも書かねばならない事だってあるだろう。

 問題は、このチ的野次馬が、常識への反駁を謳いながら通俗(それもワイドショーレベルの「おかはいさう」+紋切型の公務員・世俗風潮批判)そのものであり、その上、自分では世間を憂いているつもりでいながら、己の非常識が世間様に後ろ指さされていることに気づこうともしないからである。

 SPAM宣伝をしたくなるほど田中康男批判に自信をお持ちなら、その情熱で今回の事件の現場も取材してみてはどうだったのかね。元の新聞記事もろくに読まずに救急隊員を批難して、不明を指摘されて逆ギレしてコメント削除なんて、その態度のほうがよっぽど聞く耳持たないカルトだよ。


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 コメント削除・TB拒否・勝利宣言という、「blog全焼の課程」を辿ったところなので、本来ならこのエントリーはupしないつもりでいた。ところが該当記事を削除したかと思えば突然復帰させ、さらには余程悔しかったと見えて勝利宣言の上塗りである。さすがに「棹さす」は「楯突く」に直したようだが、これ以上の反論が余程怖いと見えて、コメントもトラックバックも停止している。

 まあ、当人は自分の非常識っぷり、ズレっぷりに些かの心当たりも持ち合わせていらっしゃらないご様子なので、バカでも自覚できるよう書いて差し上げた次第也。尤も、他人の批判に自ら耳を傾けるような謙虚な正確にはとても見えないので、九割方は読者サービスかも知れませんが。


〔追記〕2005/05/07 06:00:00

 週刊オブイェクトへのリンクが死んでいたのでいま同サイトを見たところ、ライブドア版の日記もあるらしい。んで、「意見があるなら本名書いて礼儀正しくメールするのが本当だ。」などと仰っておられる。これ以上自分のバカを棚に上げて夜郎自大を続けるようなら、「礼儀正しくメール」で喧嘩を買って差し上げようと思っております。