昔から本屋さんが好きだった。
子供の頃は、まだ昭和の時代で
立ち読みができたので、
毎週末、本屋に行くのが楽しみだった。
大人になってからは、本屋に行けば、
自分の知らない世界が
無限に広がっているように感じ
新しい世界を見つけるべく足を運んだ。
久しぶりに「気分が軽くなるような」本が
読みたくなり、なんでも揃う、丸善書店へ。
お目当ては、
軽いタッチの4コマ漫画で展開される
お疲れ気味の心をいやしてくれる、
益田ミリさんの文庫本。
1.『美しいものを見に行くツアーひとり参加 (幻冬舎文庫)』
美しいものを見ておきたい。40歳になった時、なぜかそんな気持ちになりました。北欧のオーロラ、ドイツのクリスマスマーケット、フランスのモンサンミッシェル、赤毛のアンの舞台・プリンスエドワード島……。一人での海外旅行は不安だけれど、ツアーなら大丈夫。一度きりの人生。行きたい所に行って、見たいものを見て、食べたいものを食べるのだ。
森の近くに引っこした翻訳家の早川さんは、夫と小学生の息子・太郎との3人暮らし。ある日、太郎は森に生える〝優しい木〟について、お母さんが教えてくれたあることを、大 好きな人にそっと伝えた。優しい木は優しい から何でも話していいんだって、うまく言え ない気持ちとか……。森の中を行き交う人た ちの間にじわじわ優しさが広がる名作漫画。
出版社別の文庫棚で、
お目当ての本があったことに喜び、
手を伸ばそうとしたら、
美しい青い海に、花飾りが浮かんでいる
表紙が印象的な
目に飛び込んできた。
このノンフィクション本のあらすじを読んだ。
200名の患者を看取ってきた友人の看護師が病を得た。「看取りのプロフェッショナル」である友人の、自身の最期への向き合い方は意外なものだった。残された日々を共に過ごすことで見えてきた「理想の死の迎え方」とは。
パラパラとめくっていた手が止まる。
「膵臓がん。・・・主膵管型IPMN・・・」
この本の取材対象である訪問看護師の方の
病名を記したページだった。
まさか、
IPMNを忘れようと思って
気楽な本を買いに来たのに、
このような本を手にしてしまうとは・・・。
パラパラと読み進めるだけでも、
「末期患者の在宅医療」をテーマに
取材して執筆された内容は、
とても良質な感じを受けた。
しかし、この本を買うのは「今」じゃないと、
ゆっくり棚に戻す。
いつか必ず読んでみたい本。
けれど、まだ今じゃない。
著者であるノンフィクション作家の
佐々涼子さんは、
Amazon Originalドラマ
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」
の原作本の著者として知っていた。
最近の活動が気になり、ネットで調べたところ、
2022年末に脳腫瘍で闘病中であることを公表。
作家・佐々涼子 自分の“死”と向き合う 覚悟と希望【おはよう日本】|
ノンフィクション作家の佐々涼子さんはこれまで「生」と「死」をテーマにした作品を発表し続けてきた。海外で亡くなった人を母国に送り届ける仕事を描いた作品はドラマ化され、終末期の患者の在宅医療に密着した作品は大賞を受賞。そんな中、佐々さん自身が2022年12月に悪性脳腫瘍と診断され余命は数ヶ月かも知れないという。数多くの死を冷静に見つめ書いてきた佐々さんですが自らの死に対しては書けない日々が続いている。心の葛藤を自身の言葉で語る。 (2023年12月26日放送の「おはよう日本」から)
出版社から何度か「自分の病について書かないか」と打診されるが、
「書けない」と断っているという。
けれど、昨年出版された
過去10年に書き溜めてきたエッセイとルポルタージュの作品集
『夜明けを待つ』のあとがきには、こう書いてあるらしい。
彼女が闘病中に思い至った
エッセンスがつまっているように感じ、
個人的に
いつまでも覚えていたい文章として、
とても心に残りました。
(そして、訪問先のこどもホスピスの代表理事から聞かされたことを基に、次のように書いた。)
先日、代表理事の田川尚登さんがこんなことを語ってくれた。
「寿命の短いこどもは、大人よりはるかに、何が起きているか、ものごとがわかっています。だから、『もっとやりたい』とか、『つぎはいつ遊ぶ?』と、わがままを言ったりしないんです。ただ、その日、その瞬間のことを『ああ、楽しかった』とだけ言って別れるのです」
「ああ、楽しかった」と……。
取材をしていた時には、まだピンとこなかった。
だが、その時わからなかったことも、今ならわかる。
私たちは、その瞬間を生き、輝き、
全力で愉しむのだ。そして満足をして帰っていく。
なんと素敵な生き方だろう。
私もこうだったらいい。
だから、今日は私も次の約束をせず、こう言って別れることにしよう。
「ああ、楽しかった」と。
(「夜明けを待つ」 あとがきより)
(下記のNHK記事より引用)