最近話題を呼んでいる映画「PLAN75」を見た。
 カンヌ国際映画祭で特別表彰されたこともあり、評判らしい。大勢のお年寄りが映画館に足を運んでいるという。
 映画のテーマは「安楽死制度」である。国会で満75歳になれば、無償で安楽死ができる法制度が可決される。この映画に高齢者が興味を抱き、見たいと思うのは理解できる。
 場内を見回せば多くの席が埋まっていた。70歳を超えたような高齢者だけではなく、高齢の親を抱えていそうな中年の女性も多い。
 超高齢化社会を迎える近未来の日本を描いているが、この「PLAN75」があまりにもお粗末な制度であり、実際にこんな制度が日本で制度化されても、75歳を超える高齢者に理解され、利用されるとは到底思えない。
 無償で安楽死できる制度であり、10万円が支給され、一日15分間、コールセンターの職員と電話で孤独を癒す。コールセンターの役割は利用者が安楽死を取りやめることを防ぐことにある。ある期間が過ぎると、次から次へと安楽死施設へ送られ、薬殺される。亡くなった人の遺品・遺産は怪しげな産業廃棄物業者の手で処分される。たった10万円の支給金とは恐れ入る。
 この制度を利用する高齢者は働きたいけれど、高齢を理由に職を失い、就職の斡旋をしてもらえず、生活保護制度からも見放され、住む家を亡くした人々のようである。希望を無くさせ、仕方なく「PLAN75」を利用させるのである。死刑制度といってもよい。どれほど日本が弱者に厳しい、嫌な国だといっても「PLAN75」は日本では制度化されないだろう。だが「PLAN90」だったら、やりかねないか。
 映画のラストシーンはこの制度の行く末を暗示しているのだろうか。制度は破綻するのか、しないのか。

 

(映画公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/