こんにちは、フクロウです。
これは未経験の不動産屋(不動産の知識・経験ゼロの男)が宅建試験に合格して、ひとりで不動産屋を開業して不動産屋のリアルをお伝えするブログです。
地面師とは不動産取引における詐欺師のことです。土地の所有者になりすまし、売却を持ちかけてお金をだまし取ります。
地面師は本人確認書類や印鑑証明書などを偽装して取引きします。
「書類を偽装しているけど本物かどうか、分からないの?」と思うかもしれませんが、近年はデジタル技術が発展したことで本物の書類と見分けられないほど精巧な作りになっているため判別は難しいのです。
また地面師は土地の所有者1人だけでなく、司法書士や不動産業者などを装うグループ、つまり複数人なので「怪しい」と見抜くのは困難なのです。
犯行を計画する主犯格、売主(所有者)になりすます役の人、本人確認書類や印鑑証明書を偽装する人、銀行口座を用意する人、法的サポートや手続きを担う弁護士や司法書士役の人など幾つかの役割があり、地面師とはその集合体なのです。
積水ハウス地面師詐欺事件
2017年にも積水ハウスが地面師に土地の購入代金として63億円をだまし取られた事件がありました。(積水ハウス地面師詐欺事件)
東京の五反田駅から徒歩3分のところにある「海喜館」という旅館がこの事件の舞台です。敷地面積は約600坪であり、時価100億円と言われていた土地です。
地面師は積水ハウスと約600坪の旅館敷地を70億円で購入する売買契約を締結しました。
この売買契約の窓口になった「IKUTA HOLDINGS株式会社」という会社が所有権移転の仮登記をした後、積水ハウスが移転請求権の仮登記をして売買代金70億円の9割の63億円を支払い所有権移転登記の申請をしました。
ですが、数日後に「相続」で引き継いだ本当の所有者が所有権を移転したのです。
そうです。
「海喜館」の本当の所有者は亡くなっていたのです。
法務局から不動産の本登記却下の連絡があり、登記所は相続で受け継いだ所有者の所有権移転を認めたので、積水ハウスの仮登記を認めませんでした。
……この時点で積水ハウスは63億円を登場人物になりすました地面師グループに騙し取られたことになります。
これが2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」です。
騙された要因や不審点
・不動産会社が地面師対策として行う「周辺住民への確認や聞き取り」をしなかった
※物件の所有者の写真を近隣住民に見せて本人確認をするのが一般的です
・本物の所有者(相続で引き継いだ人)からの「売買契約はしていない」などと記載された内容証明を売買取引を邪魔する人からの妨害行為として処理した
・偽の所有者から「土地の権利書なしで、本人確認情報で登記申請をしよう」と申し出ていた
※あり得ません
・偽の所有者は自分の誕生日や干支を間違えていた
※あり得ません
・偽の所有者は現住所の番地を間違えていた
※あり得ません
・支払いは銀行振り込みではなく、記録が残らない預金小切手を利用
※あり得ません
・売買契約の窓口になった「IKUTA HOLDINGS株式会社」のこともあまり調べてなかった
※「IKUTA HOLDINGS株式会社」はペーパーカンパニーであり、地面師のグループです
……酷いですね。
時価100億円と言われていた土地が70億円で購入できるなら急ぎたくなる気持ちは理解できますが、本来ならば「怪しい」と思う所を適当にしてしまった結果がこんな悲惨な事件になってしまいました……。
「積水ハウス地面師詐欺事件」により積水ハウスの会長と社長は対立してしまい、同社株も下落しました。
63億円を騙され、株も下落し、何よりも世間の積水ハウスに対する評判を下げたことが一番のダメージです。
もちろん、この事件で一番悪いのは地面師グループですが、しっかりと確認しなかった積水ハウスにも落ち度はあると思います。
※ちなみにこの場所は旭化成不動産レジデンスが正式な所有者から土地を取得し、「アトラスタワー五反田」というタワーマンションを建設しています(2024年3月完成予定)
まとめ
地面師による詐欺事件は大手企業だけが狙われるものではなく、一般の人がターゲットになる可能性もあります。
事前に回避するには買主本人も不動産売買を多少理解した上で、信用できる不動産屋を通しましょう。
「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」
著者・森 功(もり いさお)
コチラの本には地面師がどのように詐欺事件を企画し、犯行を進めるかなど詳しく書かれています。
これから不動産の購入を考えている方は読んで損はないと思います。