とある日、ごく平凡な若手サラリーマンである私に兄弟から連絡が入った。

「叔父さんが怪しい不動産屋に家を売りそうになっている」


何のことやら理解できず、話を最初から聞くと、叔父は脳梗塞や骨折で仕事を辞め、自宅療養をしているうちに介護が必要な状態になっていたようだ。

その間にも屋根修理業者に現金600万円を支払っていたようで、まさかと目眩がした。


叔父は64歳、私の会社では定年は65歳で、嘱託社員も数多くいる。そんな世間のギャップとの違いに驚いた。

叔父は独身で生家に一人で暮らしており、血縁があるのは私と兄弟の二人だけである。私が就職して家を離れた以降は父の法事くらいでしか会っておらず、近況は把握していなかった。


そんな中、家は荒れ、自力で生活できない叔父を見かねた民生委員が、地域包括センターを紹介したという。


そして、包括の看護師が自宅に初訪問したところ、叔父から「お金がないから家を売りたい」と申し出があったとのこと。

看護師は、3日後に不動産屋を連れて再訪問し、不動産売却の専属専任媒介契約を同日に締結した。

しかし、家族は契約について、何も知らされていなかったのである。


これが事の始まりで、てんやわんやの日々が続くこととなる。


続く