ぜひ舞台で生の演奏を観てみたいなあ

と思いつつ、なかなかその機会がない作品の一つです。

 

オペラの多くはイタリア語かドイツ語の歌詞がついています。

あとはフランス語のが少々。

 

で、自分が子供の頃は日本語に翻訳して上演するのが

当たり前だったけど、舞台上に字幕スーパーを映写できる

ようになってから、原語での上演が一般的になり、

今では日本語版上演はほとんど見なくなりましたねえ。

 

あれはあれで趣深いものだったんですけど、まあ原語上演に

軍配が上がりますかね。

 

そう作られているんでね。

 

なので、オペラ歌手の多くは英語は必須で、他にもこの

ドイツ語、イタリア語(プラス、できればフランス語)に

堪能な方が多いようです。商売道具として必要ですからね。

 

で、この青ひげ公の城はハンガリー語のオペラ。

作曲者はハンガリー出身のバルトーク。

 

うーん、となると、ちょっと上演が難しそうなんだよね。

まあ発音だけならできるんでしょうけど、真の意味で

役に入るためにはその言語、つまりハンガリー語に

通じていないとなかなか演じきれないんだと思います。

 

特にこの作品は男女二人だけの掛け合いで成り立っていて、

しかも心理的な駆け引き、夫婦間の感情のもつれを

表現しなければならず、台詞への深い理解がより重要。

 

ハンガリー語を操れるオペラ歌手となると、現地の方以外に

あまり多くないでしょうし、ことさら日本で上演となると、

なかなかねえ。。

 

というわけで、この作品はまだ見たことがありません。

 

映像ではいくつか見たけどね。

 

まああれですよ、嫌よ嫌よも好きのうち、って話ですよ、

ストーリーは。

 

青ひげさんは公爵で、広大な領地にでっかい城を持っています。

そんな青ひげさん、どっかで自分好みの女性を見つけてきて、

彼女の家族が猛反対するのを押し切って妻にして、

自分の城に連れてくるところから物語が始まります。

 

新妻はユディットさんという、うら若き乙女。

はじめこそイチャイチャとしているのですが、

初めて訪れた夫の城にたっくさん部屋があるのを知ります。

 

そして夫曰く、

 

「どの部屋も絶対入っちゃダメ」

 

そりゃ無茶だわ。

 

もう、はじめっから「ああん、もう、早くはいって!」って

言っているようなもんじゃん、そんなん。

 

案の定、ユディットさんは「ああん、もう、早くいれて!」って

青ひげさんにおねだりします。

 

で、青ひげさん

 

「しかたないなあ、じゃあ、ひとつだけね」

 

とじらします。

 

「うんうん、一つだけでもいいから、早く早く!」

 

とユディットさん。最初の部屋に入り、中を知ります。

 

この「部屋」というのは、暗に夫の「深層心理」的な、

何か秘密めいた見てはいけないものの象徴として示唆されます。

 

一つ目の部屋を出た新妻。「さ、二つ目も開けて開けて!」

って、そりゃあそうなるわな。

 

「いけない子だね、君は。

  しょうがないなあ、じゃあ、二つ目までだけだよ」

 

ってなって、そんなプレイを観客は見せられ、それが最後の

7番目の部屋まで続くんですよ。

 

ま、お約束っちゃあお約束なんですけど、最後の部屋を開けることで

彼女は破滅してしまいます。

いや、受け取り方によっては、妻としての完全な幸福と

安らぎを得たのかもしれません。

 

そしてひとりになった青ひげさんは、こう呟き、舞台は幕を下ろします。

 

 「これでまた闇だ。永遠の闇だ」

 

陳腐なファンタジーかもしれませんが、それをそう感じさせないのが

バルトークの音楽。

ある時は宝石のように輝き、ある時は恐ろしい殺人や戦争をイメージさせ、

そうかと思うと無限に広がる大地の様子や永遠に続くであろう闇を、

聞く人の目の前に繰り広げる、そんな音楽が続きます。

 

しかも難しくない音楽です。わかりやすい美しく、歯切れの良い

音楽に溢れ、それが1時間という非常に濃縮された短さに仕上がっています。

 

そう、1時間。

これもこのオペラの上演の難しさの理由かもしれません。

 

歌手は2人だけだけど、オーケストラはフルメンバー必要だし、

演出によっては大掛かりな舞台セットも必要になります。

それで1時間で客を帰すわけにもいかないでしょうから、

他の曲とカップリング上演、ったって、じゃ何と?

寅さんと同時上演ってわけにもねえ。。(古っ)

だってハンガリー語よ。

 

 

 

もう父も母も墓の下です。

 

子供の頃に父が亡くなって、母はその後結構長生きしたんですけどね。

 

で、母が存命の頃、何の話だったかはすっかり忘れましたが、

それってお父さんどう思ってたの?って母に聞いたら、

 

「それはね、話したことがないの。

 その事についてはね、聞いてはいけないって

  なんか、お互いに、それは口にしてはいけないって

   そんな風に感じてたの」

 

なんの事だったんだっけなあ。もう思い出せない。

 

それで良かったのかもしれない。

 

それが何だったのか、もう永遠に地面の下の闇の中です。