あーあ

 

「オペラについて書く」って銘打っているのに、それ以外の書いちゃった。

 

まあいつかはそうなるとは思っていたけど、こんなに早く…

 

だってオペラばっかりだとなかなか文章のネタがないんですもの。

 

まあ「気が向いた時」のブログなんで、そっち重視で今回は書きます。

そしてオペラ以外なんで、一応“箸休め”ってことにしました。

 

ベートーヴェンが箸休めなんて、クラシック頭ガチガチのおじさま達から怒られそう。

ブルックナーとか聞きに行くようなロマンスグレーのおじさまから。

 

あ、ブルックナーもすごいですよね。(ぜんぜん好きじゃないけど)

 

しかもピアノソナタ第32番ってあんた、ベートーヴェン最後のソナタよ。

彼が重なる病魔に苦しめられ、特に聴力はほとんど無くなり、

親戚や周囲との人間関係にも悩み、極限に近い状態で作ったであろう作品。

 

もう涙なしには聞けません。

 

ただ、気力を振り絞って言います。

 

この曲、いわゆる「いい曲」じゃないよなぁ

 

はい、石でも何でもぶつけてください。

もっともこんなアジアの端っこの方で昭和生まれのゲイが言うことに、

この曲の価値は微動だにしないでしょうけどね。

 

でも、素直に聞いてみて。これ、いい曲?

 

いい曲、の定義にもよるかもしれないけど、仮に誰もが口ずさみたくなるような、

そして普遍的な美を備えたメロディーや、隙のない構成を持ち、いつまでも

聞いていたくなるような曲を「いい曲」とするなら、これは全然違う。

 

この定義で言えば、同じピアノソナタなら月光とか熱情は明らかに

いい曲だし、もう少し幅を広げるならエリーゼのためになんかも

間違いなくいい曲でしょう。

 

ピアノソナタ第32番は、そう言う意味ではいい曲ではない。

じゃあどんな曲か。

 

すごい曲です。

 

ペニシリンの発見とか、月面着陸とか、インターネットの一般開放とか、

それまでの世界をガラッと大きく変える事象って各分野にあると思う。

 

どれもすごい事で、この曲は音楽という分野におけるその役割を持っている。

 

早すぎたよ、ベートーヴェンさん、この曲書くの。そして亡くなるの。

 

全体は二楽章構成だけど、私は1楽章は2楽章を導き出すための長めの参道、

アプローチのように感じる。

すごいの核心は2楽章。この楽章は変奏曲。

そして有名と言えば有名な箇所、第3変奏のところ。

 

楽譜を見ると、いかにもクラシックな整然としたものだけど、

演奏する人はこのリズム感に完全に入り込まないといけないんだと思う。

 

そして聞く方も思わず体を動かしたくなる。

でもクラシックのコンサートだからじっとしていなくちゃならない。

でもリズムに乗って動きたい。できれば立ち上がって横ノリしたい。

 

そんな曲、今から200年も前に書いた人がいるんだねぇ。

すげーなベートーヴェン。すごい曲です。

 

そしてここが肝。

ただリズムに乗るだけじゃなくて、その先に深遠な世界が見えるということ。

月並みな表現かもしれないけど、宇宙を見るんです。

この先は、有るけど無いよ、だからこれで僕のピアノソナタはお終いね。

この曲を聞くたびに、そんなベートーヴェンさんの声を勝手に想像しております。

 

泣いています、今。思い出して、この曲を。

 

気を取り直して、オペラ。

 

ベートーヴェンさんもオペラを作っています。

フィデリオです。

 

いつかフィデリオについても書くかな。

 

いや、きっと書かないと思う。

自分には重すぎる、あれは。