第9回です。
夏ですね。お日様が眩しいです。
夏、と言えば虹のコンキスタドールです。
おひさま、と言えば日向坂46です。
思わず応援したくなる、そんなアイドルグループはこれで3つ目です。
頑張りすぎずに頑張れ!
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僕はオムライスが好きだ。
オムライスが好きという話をすると、可愛いかよなんて言われたりするけれども。
死ぬ前に食べたいものはって聞かれたら、オムライスって答えるし、
彼女に今日何食べるって言われたら、オムライスって答える。
先日、お袋とオムライス屋に出掛けた。
CHEZ COUPLEっていうカップルばかりいそうな、けど内装はとっても落ち着いた、食べログの評価は3.54のオムライス屋さん。
初めて行ったのは高校の頃かな、それ以来なかなか気に入ってる店だ。
いつも通り、自家製煮込みハンバーグ添えトマトソースのオムレツライスを注文した。
食べ進めていると、オムレツライス山の中腹で白色のものを見つけた。
すぐにわかった。卵の殻の欠片だ。こんなのは全然いつも通りじゃない。
が、まあこんなこともあるだろう、しょうがない。僕は大人の対応を取るつもりでいた。
そう思うや否や、僕の隣を女性の店員さんが通りかかった。
彼女に気を遣わせたくなかった僕は、咄嗟に卵の殻を口の中にしまった。
シェフとホールスタッフの連携プレーによって、一歩間違えれば殻まで食してしまうところだった。
このピンチを乗り越えた僕は、お店側がグルになって仕掛けてきたのであろう悪戯にやり返してやりたくなった。ピンチの後にはチャンスあり、だ。
クレームでもつけてやるか。頭の中の悪魔が囁いた。窓は開いていないのに店内のカーテンが揺れていた。
普段だったらまずそんな風には思わない。コックさんも人間だしミスはある。たまたま1回のミスに付け込むのは非道だ。自分も飲食店でアルバイトをしている身で、クレームを言われたら嫌な気持ちになるのもわかる。怒ったり咎めたりするエネルギーも使いたくない。
ましてや、ちょっとしたミスをカバーして有り余るほどのサービスを享受しているわけだから、お店側にクレームすることなんてまず無い。
けれども、なぜかその日はふと、文句の一つでも言ってみようかという気持ちになった。
やさぐれてた訳でも、イライラしてた訳でもない。ムズムズもソワソワもしていない。
自分がやりそうもないことをやってみたくなった。
万が一の場合は、お袋が止めに入ってくれるという安心感もあったのだろう。
自分とは別の人間になってみたかった。
さてどうしたものか、いざクレームをつけようとするとそれはそれで難しい。
主張から口調まで、保険として大義名分も。そんなことを考えていると、クレーマーの中にも、もしかしたらお店のためを思ってクレームをつける人種もいるのかも、と思えてきた。
その店の一フアンとして、その店の一熱心な客として、その店の存続と繁盛に寄与するべく、あえて言いたくないことを言う人は少ないだろうが一人くらいいたっておかしくない。
称賛に値するかはさておき、勇気のいる行動ではある。別にそんなこと自分がする必要はない。お店側が勝手に気付いて改善してくれればそれで問題ない。最悪、誰かがやってくれればいい。自分が嫌われ役を買って出るのは愚かなように思える。
いい歳したおっさんがしょうもないことで相手に喧嘩を吹っ掛けるのも、子供が可愛くてしょうがないお母さんが先生に文句を言いに行くのも、煽り運転をしてしまう運ちゃんも。
こんな好戦的な人間の大半は自分のために、日頃溜まりに溜まったストレスを解消するべく怒りをぶちまけるんだろう。
ただ中には相手のために、成長や発展を願って叱っているのかもしれない。善意があるのかもしれない。愛情表現の一つなのかもしれない。
実は必要悪だったりして。「叱ってくれる人がいるうちは華」なんて言葉もあるくらいだ。
褒められて伸びる福田吉兆がいれば、叱られて伸びる仙道彰もいる。
言わないせいで、腐っていくことだってある。
よし、言ってやろうじゃないか。
スプーンを置き、背筋を伸ばして、目の前に座るお袋に決意表明をした。
食い気味に、生意気言ってんじゃあないよ。一蹴された。
そう言いながら脛に蹴りをお見舞いされた。二蹴された。
こうして僕のチャレンジは頓挫した。
やっぱり僕は言えない。
高い強度の練習を積めない、いつから合宿が再開するのかもわからない、レースがあるのかもわからない。こんな状況下で精神的に落ち込むのは容易に想像がつく。仕方ないとも思う。
ただ仮にもコーチという立場で、今の部員との距離も一番近いわけで、何かしてあげたい、何か言うべきだとは思いつつも、どうするのが正解なのかさっぱりわからない。
陽気に接してもいいものか。腫れ物を触るように接するのもなんか違う。
ピシッと一言、発破をかけてもいいのかもしれないが、心の中に棲むお袋みたいな誰かがストップをかけてくる。
放ったらかしにして、取り返しのつかないことになっても困る。
やっぱり僕は言えない。
我ながら口の不自由な、勇気のない、そんな人間である。
言える人や叱る人、クレーマーに敬意と感謝を示しながらも、あるときは“自分らしさ”の傘を差して、またあるときは“みんな違ってみんないい”という名の洞窟に身を潜めては、これからも雨を凌いでいこう。
そんなことを思いながら、食後のコーヒーを一気に飲みほした。コーヒーの苦みがとても心地よく感じた。
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正当な理由とそれから誠実な態度をもって始めて真のクレーマーになれると思います。
難癖をつけて文句を垂れる輩には、敬意も感謝もありません。
それじゃ!パリピース✌ ('ω')
5年生 高崎善貴