訪れた者のみが知り、去ればまた意識の中から消え去る

かくされた土地を探しているようだ

所有されることも 共有されることも 公認されることもない唯一の秘境

私は夢を見たいのではない

何かとても意味の無い 何かとても重要ではない でも

私の心をなぐさめる存在を確かめたい



ある夜、突然私の部屋にやってきたリアルな神様が、私の言葉を奪ってしまいました。

私はなんとなくそんなことが起こる予感を感じていながら、いつもよりずっと落ち着いた表情で神様をみつめていました。

神様は何度も何度も私を追いつめ、言葉を失った私を責め続けるのです。

言葉を探す私の目は、めまぐるしく色を変えながら意地の悪い神様を映しつづけ、しだいに凍りついていきました。

神様は取り上げた言葉を片手に言うのです。

「どうして何も言わない?言いたいことがあるなら言ったらどうなんだ。この役立たずめ。おまえを知らしめてみせろ。お前を知りたい。」

私は重なり積み上げられる神様の言葉が鼓膜をゆらしていることだけを感じながら、ゆらゆらと揺れました。私は神様を見上げて、軽蔑していたのです。

私は私自身の奥深くへ意識が集中し、ひとつの点へと還っていくのを感じていました。

私は孤独すら捨てて満足でした。

神様ですら、私以外の他人でしかありませんでした。

神様は何かとても見苦しい様子でわめき、言葉を投げつけ、私を傷つけようとしました。

私は余裕のあるほほえみを浮かべて、沈黙を続けました。

すると神様は思いついたようにデスクの上の紙とペンを取り上げ、わたしに押しつけました。

私は首を横に振って、意味のない行為だと示しました。

神様は跪き、泣きながら懇願するのです。私は何かダンスの振り付けでも見るような感覚にとりつかれ、神様の体の動きを観察していました。まるで脳みそをアイスクリームのスプーンですくって味わっているつもりになって、すっかり私自身の試行に夢中になっていたのでしょう。

そのとき、わたしは本当に正当な立場に立っていたのです。

神様はついに涙を流しながら怒りはじめ、歯を剥き出しにして私に襲いかかってきました。

私はぼんやりと身体の行方を気にしながら、恐ろしいバイオレンス映画でも見るように傍観していました。

「お前を知りたい。脳みそを取り換えてやる!」

神様は私の頭をコインのようなものでこじ開け、ドロドロした脳みそを取り出しました。

わたしは小さく悲鳴をあげて、なんだか用心深く脳に付随した目玉が取り出されるのを感じていました。

上坂は同じように自分の脳みそと目玉を取り出すと、しばらくぐちゃぐちゃと感触を確かめてから、私の脳みそと目玉をプラモデルマニアのような手つきではめ込みました。

そして、わたしの意識を手に入れたとよろこんだのでしょうか。


目を見開くと、私は神様の姿をして、ドロドロの脳みそと血にまみれた私の身体の前で呆然としていました。私はゆっくりと片足を上げると、神様の脳みそを大きな鳥の糞のように飛び散らせました。

すると、私はまたひとりきりになって、夜の闇の中から私の言葉を取り戻し、その重さに驚いたのです。

私は重い言葉を抱えて、また意識を拡散させる罰をもらったのでした。

まちがったパズルを無理やりはめ込んだような違和感にさいなまれながら、私はこうして語り始めたのです。