本屋で何度か立ち読みをした

中村 淳彦さんの「名前のない女たち」。

ずいぶん前から出ているシリーズ本で、今丁度「最終章」という本が出ていて、

8年にもおよぶシリーズ本。

内容は、「AV女優たちへのインタヴュー」。

彼女たちの「素顔」とやらは、中村さんの予想を上回る、

地獄のように深い闇だったことを知る。

立ち読みしたのは、今出ている「最終章」。

まるで、今まで中村さんが出会った女性たち、

延べ500人の人生の「最終章」というような衝撃。

性風俗に身を落とす女性たちは、当然といえば当然ながら、

性や、人間、世界の価値観への、歪んだ先入観を植え付けられている。

子供のころから性虐待を受けている人がほとんどだ。

子供のころから、輪姦だの実の親から大人になってもレイプされている人もいる。


性虐待、虐待、親の離婚、親の価値観の押し付け。

最初から、壊れた家族、壊れた人生から出発し、

闇の底の人生から這い上がろうとして、最後は壊れた世界の瓦礫の中に蹲る女性たち。
世界の闇の底、絶望の果てとは、こういう場所かもしれないと思う。

世界の闇の底、欲望の果てから上がる絶望のうめき声。

わたしの中で、完全に、「それ」を呼びうる名前を、喪失していた。

「不幸」、「可愛そう」、「痛い」、「傷」、「同情」、「憐憫」、・・・・・

そういう言葉を凌駕する。

中村さんが、彼女たちに接して感じたこともこういうことで、

それで「名前のない女たち」かと思った。

実際は、本名を捨てて、AV女優としての源氏名で生きている彼女たちの無名性のこと。

強い感動に接したとき、人は、それを名づける「言葉を喪う」。

これは、ネガティブな意味で、言葉を凌駕するもの、名づけを超えるもの。


彼女たちの存在自体が、「告発」だと思った。

救われない、救いを拒否する、救いの届かない彼女たちの人生自体が、

今の世界への、今の人間への、不完全さへの「告発」だと思った。

他者の欲望のはけ口にされ、欲望に利用され続け、欲望の果てに、

擦り切れたように生を終えていく彼女たち。

救われない彼女たちの存在は、救いのないこの世界への告発だと思った。



国連から「日本の子供たちは社会的ネグレクトに遭っている」と警告を受けたのは

十年以上前だっただろうか。

見守られることもなく、名前を呼ばれることもなく、

触れられることもなく放置された闇は増殖し続け、

世界を侵食し、喰らい尽くす。



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宝島社


http://tkj.jp/book?cd=01698101


9月4日ロードショー映画「名前のない女たち」公式サイト


http://namaenonaionnatachi.com/index.html