無知の謗りを免れない失態をさらす寸前から、ジタバタして先送りを続行中。


いつもは声がデカい高野がなぜか声をひそめ、森田にルンシャンフーブの面白さを語っているそのすぐ横で、俺は“そこそこ知ってはいる”ような素振りで黙って聞いていた。


高野の話が一段落すると、森田は俺に振ってきた。

「向井はどのくらいハマっているの?」

「高野ほどじゃないよ」


これ以上は何も答えまい。外堀のさらに外側でも下手に触れればカマを掛けられかねない。


「え、向井もルンシャン知ってはいたんだ~」

高野が意外そうな顔をした。


「朝、正門のところで会ったとき、ルンシャンに出てくる朝の挨拶をかましたのにルンシャンで返してくれなかったよな」


「あ~、ゴメン。ちょっと考え事していて忘れた」

「あ、そうだったんだ。じゃあ、森田に教えてやるのも兼ねて、俺と向井でルンシャングリーティングを実演してやろうぜ」

「…いや、校内はヤバいだろ」

とりあえずそう言うしかなかった。ルンシャンフーブに関わる諸々の事柄が校内では忌避される空気になっている可能性に賭けた。


「それもそうか」

「何だよ、見せてくれないのかよ」

「帰りにファミレスでな」


もちろん俺は一時間目に仮病を使って早退した。