先々週、どういうわけかボイパ部からスカウトされた。
別にボイパが得意なわけでもパーカッションが上手いわけでもない。ボイパのアーティストが好きだというわけでもないし、ボイパしたくなるような音楽が好きなわけでもない。
そんな俺が、ヤツらの目の敵にされることはあっても目にとまるはずない。
だか実は、思い当たるふしがひとつだけある。
デコボコだから。
俺の頭蓋骨がやたらデコボコしているからだと思う。それ以外に考えられない。
デコボコしているからといって、叩いたらいい音が鳴ったり面白い音が鳴ったりするとはかぎらない。もちろん口の開け方を調整する必要もある。
わざわざそんなことを自分で試したことなどない。
親も、叩いた音がどうのこうの言ったこともない。
そう、物心つく前から毎日のように殴る蹴るの虐待に励んできた実の両親も殴ったり蹴ったりしたときの音については、頭に限らず顔、お腹、手足の場合でもどうこう言ったことはない。
「いかにもオモロイ音が鳴りそうじゃね?」
そういった好奇の目が群れるサークルに興味を持たれてしまった。ボイパで叩かれまくり、その姿を観客に晒されることになっても、まぁ仕方ない。そのほうが親のダブルスでくるフルスイングより何百倍もマシだ。
入部して数日後、ボイパ部の先輩が歓迎会を自宅でやるから来いよと言われた。俺のための歓迎会というより、ちょっと先に合唱部からスカウトした翔太のためなのだろう。
歓迎会はイヤなこともなく終わった。あいさつをして帰ろうとすると、先輩に呼び止められた。その後ろには親父さんらしい人がいた。
親父さんも趣味でボイパをやるのかなとか思っていると、頭を見せてもらっていいかと言われた。
先輩の話によると、親父さんは市立病院の医者らしい。
その日は先輩の家に泊めてもらうことになり、翌日、レントゲンやCT検査を受けさせられた。そのあと親父さんに連れられ、会議室へ。入るともう一人の医者と警察官がいて、いろいろ聞かれた。
お察しのとおり、このあとウチや隣近所が騒然となり、しばらく祖母の家で暮らすことになった。